残念!人望がない上司は「ひと言」足りない ANA上司の「すごい気づかい」ベスト3
しかも、ANA社内の気づかいは一方通行ではありません。気づかいといえば、「目下の者が目上の者にするもの」というイメージをもつ人は少なくないでしょう。朝、職場で後輩が部長の出勤前にデスクを拭いておく、女性社員が部長にお茶を出す、若手社員が部長のためにコピーをする……など、時代が変わっても、まだまだ上下関係が残っている職場も多くあると思います。
しかしANAにおいて、気づかいの主体は、決して部下や後輩だけではありません。部下に指示を出す上司、後輩にアドバイスをする先輩など、指示する側の人にとっても、気づかいをすることは大切です。
部下に気づかいするのは「重要だから」
ANAの機長、CA、整備士のリーダーたちは、部下に気づかいすることの大切さを、それぞれの立場から次のように話します。
「その日そのフライトを成功させるためにクルーが集まります。クルー一人ひとりのパフォーマンスを最大限に発揮してもらえるよう、話しやすい雰囲気を機長がつくらなければなりません。小さな異変に気づいたとき報告してくれる状況があれば、それだけ安全性が高まるからです。『すみません、ちょっと気になることがあるんですけれど』と言ってもらえる雰囲気をつくるのは、機長の責務です」(機長)
「CAの上に立つチーフパーサーは、CAのモチベーションを高めることにとりわけ努力します。元気のないCAがいたら、フライトが始まるまでにそのCAの心をもちあげることは必須です。本人の気持ちに寄り添って、『なにかあったの?』と聞きます」(CA)
「部下に指示をする場合、目的や方針を明確に伝えなければなりません。なぜそれをやるのか、いつまでにやらなければならないのか。そういう指示を明確にしてあげないと、指示を受けた部下も困ってしまいますから。上司は明確に伝えるということを意識して、気づかいをしなければなりません」(整備士)
このようにANAでは、上司が部下に気づかいをしているのです。では、ANAの上司は、具体的にどのような気づかいをしているのでしょうか。今回は、ANAの社員が実践している部下への「ちょっとした気づかい」から特徴的なものを3つご紹介します。
1、上司・先輩が待ち合わせに早く行き過ぎない
上下関係がいまも厳然とあるような企業では、「待ち合わせで上司を待たせてはいけない。部下が先に待っているべし」という心得のようなものがあるかもしれません。
ANAのパイロットの間でも、基本的に副操縦士が機長を待ち合わせ場所で迎える場合が多い文化で、いまもその慣習は続いています。部下が上司を待ち合わせ場所で迎えるときは、当然、部下は上司より早く到着していなければなりません。
例えば、出張で滞在しているホテルで「朝8時30分にロビーに集合」という場合、「上司よりも早く」と考えると、8時20分ないし8時15分頃にはロビーで待っているということになりかねません。
そこでベテラン機長の一人が、かならず実践していることがあります。フライトの前日、機長が集合時刻を副操縦士に告げるときに、「集合時刻までに来ればいいからね」とひと言、加えておくのです。