非常時に対応し切れなかった歯科医による身元確認、生かされない教訓--震災が突きつけた、日本の課題《5》/吉田典史・ジャーナリスト

「今回の被災県に限らないが、過去の災害で被災した人が自分たちは被災経験があるから、今後、災害が起きても大丈夫と考えるのは誤りだと思う。災害の規模やフェーズ、場所や相手によって、ニーズは異なるのではないか」

都築氏、岩原氏の2人は現在、災害時に歯科医師は何ができるか、何をすべきなのかを考え、議論を積み重ねている。首都圏の歯科医師会などに出向き、研修会で講師をしたりもする。都築氏は、「歯科医師は遺体安置所などでの歯科所見採取や、被災者などへの口腔ケアだけでなく、ほかにもできることはある」と話す。

「歯科医師の多くは開業医であり、病院に勤務する医師のようにチームで動く機会が必ずしも多いわけではない。だが、災害時は歯科衛生士やロジスティクス(事務管理要員)らとともにチームで対応することが必要になる。そこが、1つの課題となる」

都築氏は、岩原氏のことを「今は双方で対等の会話ができるレベルにまでなった」と評価する。今後は2人で災害医療に携わることができる歯科医師のつながりを広げていきたいと考えている。

※タイトル横写真は震災直後の気仙沼付近、都築氏撮影

よしだ・のりふみ
人事・労務分野を中心に取材・執筆を続ける。著書に『あの日、「負け組社員」になった…』(ダイヤモンド社)、『いますぐ、「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)、『震災死 生き証人たちの真実の告白』(ダイヤモンド社)など。

シリーズ「震災が突きつけた、日本の課題」は今回で終了です。

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