混迷極めるシャープ、銀行と革新機構が牽制 液晶事業めぐる最終攻防はどうなる?

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再建方法として、シャープ本体に革新機構が出資する案も取りざたされたものの、シャープの後ろにいる銀行は業績変動幅の大きい液晶事業の切り離しを求めており、現時点では事業ごと分社化する見方が根強い。

ただ、その“値付け”をめぐり、買い手側と銀行側で折り合いがつかず、交渉は長期化している。シャープは自社の借金のうち、液晶事業にひも付いた額がいくらか確定できていない。そのため、交渉をまとめるのに必要な事業価値を算定するのが、難しい状況だ。

「黒字化までには相当の時間が必要とみられるうえ、統合に伴い、工場や組織の再編を実施すれば、減損処理や退職金費用も必要となる。投資家側から見ると、そうとう値段が下がらないと引き受けにくい案件」(みずほ証券の中根康夫アナリスト)。

債権放棄に抵抗する銀行側

買い手となる革新機構は買収負担を減らすため、銀行に向けて、さらなるDESや一部債権放棄を求めているようだ。

それでも、ある主力行幹部は「DESをやってさほど時間が経っていない。今の段階で債権放棄という話は信じがたい」と厳しい姿勢を示す。銀行からもう一歩譲歩を引き出すには、一段のリストラなど、シャープ自身が身を切ることを求められる。

銀行、買い手、株主や従業員ら、すべてを納得させる策など、打ち出せるのか。シャープの決断の時は近い。

「週刊東洋経済」2015年12月26日-1月2日号<12月21日発売>核心リポート02を転載)

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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