2016年が5年ぶりの円高ドル安になる理由 実質実効相場でみれば今がそのとき
この点、今年6月10日に黒田日銀総裁が「ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れるということはなかなかありそうにない」と述べ、当時の実勢相場である1ドル=125円が黒田ラインなどと呼ばれることになった経緯は記憶に新しい(答弁の動画を見る限り、それが当人の本意だったとは思えないが)。
上述したような過去のドル高局面(1978~1985年や1995~2002年)でも当然円安は進んでいたが、REERがプラザ合意以前までさかのぼるほどの円安水準になることはなかった。現状は史上まれに見る円安水準にあると言っても過言ではない。
長期の尺度は役に立たないのか?
以上のように物価尺度に照らし考えると、ドル高ないし円安に過剰感が生じ始めていることは否めず、その両者の通貨ペアであるドル円相場の続伸を予想するのはかなり勇気がいるように思えてくる。少なくとも、変動為替相場制をしく以上、REERが一方向に振れたまま調整しないということは想定できない。調整が2016年に起きるかどうかは議論があるにせよ、「反転のタイミング」は検討して然るべき時期に差し掛かっていると言えよう。
なお、REERや購買力平価(PPP)のような物価尺度は長期的な動きを説明するものであって市場予測には有用ではないという声も聞く。しかし、「長期的な動きを説明するものだから、目先の予想には使えない(使わない)」というのであれば、一体それをいつ使うのだろうか。そういった尺度で見て、明らかに行き過ぎと思われるポイントはいつか必ずやってくる。
そのポイントは事後的にしか正解が分からないわけだが、事実としてドルないし円のREERは歴史的にも見ても相当一方向に振れている。このような状況を前に節目の到来を警戒すらしないのは不用心に思われる。フェアバリューが存在せず、しかも流れの速い為替の世界において、いったん立ち止まって、現在が歴史的に見てどういう立ち位置なのかを考えることは決して無意味ではない。
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