2016年が5年ぶりの円高ドル安になる理由 実質実効相場でみれば今がそのとき
1978~1985年や1995~2002年のドル高局面と比較すれば今次ドル高局面はまだ期間こそ短いものの、「上昇の角度」で見れば当時より鋭角的という見方もできる。
しかし、「強いドルは国益」と、通貨高志向を露わにし、IT革命による生産性改善の恩恵に浴していた1995~2002年のように、今の米国の経済がドル高を甘受できる態勢にあるといえるだろうか。
例えば「為替政策報告書」などを見ても、昨年10月、今年4月、そして今年10月と表現の変遷を見比べれば、明らかにドル高に対する許容度が後退しているように見受けられる。「強いドルは国益」と言ってのけるほどの余裕は感じられない。
経済指標にもドル高の悪影響が出始めている
各種計数にもドル高の悪影響が滲み出てきている。6年ぶりの最終減益が予想されている米7~9月期決算やリセッション(景気後退)の真っ只中であった2009年6月以来の低水準を記録した米11月ISM製造業景況指数、2012年10月以来の低水準を記録した米10月輸出金額(季節調整済み)など、ドル高が重しとなりつつある兆候は確かにある。
「9年半ぶりの利上げ」に沸く一方で、それがもたらす副作用も確実に浸透し始めているが、足元ではそれを警戒するムードがあまりにも薄い。既に米景気の拡大局面が歴史的に見ても相当な長期間に及んでいることなども踏まえれば、そろそろ雇用回復が成熟化してくる可能性もあるだろう。そうした状況の中、実体経済への負担を踏まえ、2016年以降の米通貨政策におけるドル高への懸念は強まることはあっても弱まることはないというのが筆者の考えである。
一方、同様に日本銀行公表のREERから円相場を評価すると1972年並みの水準まで円安が進んでいる。1ドル=300円台の時代と同程度のREERであることが現状において適切かどうかという議論は脇に置くが、少なくともREERが長期平均から乖離し続けることはないとの前提は理論的には尊重される。
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