【キーマンズ・インタビュー】グローバル展開で半世紀超の歴史、キヤノンの人事施策とは--大野和人・執行役員人事本部長に聞く
アメリカ人の中には、CANONが自国の企業だと信じ込んでいる人もいる。CANONという言葉は欧米人に馴染みやすいし、海外進出も早かった。ニューヨーク支店を開設したのは1955年だったし、スイスのジュネーブに欧州総代理店を設けたのは1957年だった。1965年には現地法人Canon U.S.A., Inc.を設立している。
--グローバルな人事施策として特別なものはありますか?
世界に進出している日本企業はどこでもそうだと思うが、現地法人主体に運営している。人事や雇用は、国によって法制度が異なる。人件費の水準も違うし、宗教も地域と国によってさまざまだ。全世界で一律な人事制度を適用することは難しい。
ただし、キヤノンの社員として、コアバリューは共有してもらう必要がある。キヤノンの創業は1937年だが、当時から「三自の精神」を行動規範としてきた。三自とは「自発・自治・自覚」だ。
自発とは何事にも自ら進んで積極的に行なうこと。自治とは自分自身を管理すること。そして、自覚とは自分が置かれている立場・役割・状況をよく認識することを指す。
またキヤノンは創業50年を期に、1988年「第二の創業」を宣言し、「グローバル企業構想」をスタートした。その時に世界人類との「共生」を企業理念とした。
「グローバル企業構想」は、1996年スタートの「グローバル優良企業グループ構想」に引き継がれ、2011年から2015年はフェーズIVと位置づけられている。これまでのキヤノンは生産と販売をグローバルに展開してきたが、研究開発は日本中心であった。そこでフェーズIVでは研究開発で三極体制を確立する。
このようなグローバル展開に不可欠なのがコアバリューの共有だ。「三自の精神」と「共生」の企業理念の共有は、グローバル人事施策としていっそう重要になっている。この「三自の精神」はコンプライアンスカードに記されており、日本人社員には日本語カードを渡しているが、それ以外にも17の言語に翻訳し、各国の社員に配布している。