iPhoneニュースアプリが抱える課題とは? 参加パブリッシャーは不満を漏らしている

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さらに、運用に関する問題もある。このアプリには70以上のパブリッシャーが参加しているが、アプリのトップページで一度に紹介されるパブリッシャーは限られている。そのため、他社よりトラフィック面で優位なパブリッシャーが出てくるのだ。

ユーザーエクスペリエンスにおいても問題は発生している。Appleの「News」には、それぞれコンテンツをプロモーションする方法が用意されていない。いくつかのパブリッシャーたちに望まれていた、フィード形式の表示でもないのだ。

Appleの「News」には2つの特徴がある。パーソナライズコンテンツと、レコメンドコンテンツだ。しかし、それほどパーソナライズされた感覚もなく、またレコメンドも同じニュースの他社バージョンがしばしば含まれる。これらすべてのことを踏まえると、Appleはこのアプリのリリースに不用意であったと感じてしまう。

すり合わせはこれから

しかし、すべてのパブリッシャーが不満を抱えているわけではない。「ワシントン・ポスト」(初回起動時にお気に入りのメディアを選ぶ画面で「CNN」「ESPN」「ニューヨーク・タイムズ」に次いで、4番目に紹介されている)にてデジタル領域開発担当の執行役員を務めるコリー・ハイク氏は、「『News』で読む、自社のコンテンツには満足している。新たなオーディエンスの獲得にもつながっている」と話す。「我々の新たなユーザーにとっては、素晴らしい出会いのツールであり、彼らがこのアプリで我々を見つけてくれて満足だ」。

また、不満をもつパブリッシャーたちも諦めたわけではない。このアプリが成長段階であり、オーディエンスの習慣づけがされるまでに時間がかかることも理解している。トラフィックをマネタイズができない危険性も十分あるが、現在はまだ新たなオーディエンスの獲得や、新しいプラットフォーム、配信方法などの魅力の方が勝っている。

Appleはパブリッシャーたちのニーズを理解し、彼らと協働するとしている。また、これと同時に、パブリッシャーたちはFacebookの「Instant Articles」にも改善を要求している。同サービスもソーシャルネットワーク上で広告枠の販売が難しいのだ。

とある役員の話によると、このような成長に伴う痛みは、プラットフォームとパブリッシャーが独自に成長を遂げてしまったために引き起こされたという。「プラットフォームは、パブリッシャーにとっては何が重要かを必ずしも理解していない」。

Lucia Moses(原文 / 訳:BIG ROMAN)

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DIGIDAY[日本版]編集部

2015年9月1日にローンチした「DIGIDAY[日本版]」を運営。同サイトでは米「DIGIDAY」が日々配信する最新のデジタルマーケティング情報をいち早く翻訳して掲載するほか、日本国内の動向についてもオリジナル記事を配信している。メディアジーンが運営

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