マツコは、なぜここまで人の心をつかむのか 相手によって使い分ける絶妙なMCスタイル
これをほかのシーンにたとえるなら、対談やブレーンストーミング。「バランスを取ったり空気を読んだりするよりも、遠慮せずに発言して会話を活性化させよう」という点が共通しています。実際、マツコさんも同番組では、トロトロオムライスを真っ向否定したり、芸能人の整形について熱弁したり、ほかの番組以上に“私見”で盛り上げています。
王道型MCの『アウト×デラックス』
『アウト×デラックス』は、コンビを組む矢部浩之さんの特性に合わせた“王道型MC”。矢部さんは自らシュートを放つストライカーではなく、相手のシュートを受けるゴールキーパー型の芸人。そのためゲストに話を振り、面白い部分を掘り下げ、大きなリアクションを取るのは、主にマツコさんが行っています。
つまり、マツコさんは純然たる司会者であり、矢部さんは女性アナウンサーのような役割。画面の手前側にマツコさんが、その奥に矢部さんが座っていることからも、マツコさんがメインであることがわかります。
王道型MCでのマツコさんは、段取りを守りながらも、ゲストの話をせかすようなことはしません。「MCとしてゲストの話を真正面から聞き、それを受けて大きく笑ったり、驚いたりする」という昭和の司会者を思わせる堂々とした姿を見せています。
これをほかのシーンにたとえるなら、リーダー中心のミーティング。会社にしても、スポーツのチームにしても、リーダーがメンバーの話をしっかり聞いて、はっきりとしたリアクションを返せれば、マツコさんのように現場を盛り上げることができるでしょう。
記者型MCの『マツコの知らない世界』
『マツコの知らない世界』の見どころは、週替わりのさまざまな専門家から、どうやってディープな話を聞き出すか。それだけに、マツコさんの類いまれなるコミュニケーション力が見られる番組とも言えます。
専門家たちはタレントではありませんが、「自分の名前で仕事する」言わばセミプロのような準タレント。タレント以上に面白い部分を持っているものの、あくまで一般人だけに、マツコさんは丁寧な言葉づかいで迎え入れて、「芸能人ではなく一般人の代表」という記者のような目線から、質問形式でトークを進めています。
食べ物や家電などがテーマの日は、「どれが何でおすすめなの?」と一般人の気持ちを代弁したり、「本当にいいの?」と疑ってみたり。しかし、専門家との距離が縮まりはじめると、マツコさんのほどよいイジリが炸裂。基本的にホメながらも、友人同士のような軽口や失礼なことを言って、専門家の魅力や本音を引き出しています。ちなみに、このような“記者型MC”の代表格は、マツコさんも仲がいい黒柳徹子さん。同番組でのマツコさんは、『徹子の部屋』で見せる黒柳さんのトークと相通じるものがあります。
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