「下町ロケット」人気で製造業は人気化するか 理系の「文転就職」はいよいよ止まる?

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当然ながら中小製造業も採用活動には苦労しています。取材した大田区の製造業は学生向けに説明会を開催しても参加してくれるのは数名。ところが就職サイトからのエントリーは百名規模でそれなりにあります。ところが大半の学生はドタキャン。そのような状態が続き、トレンドに慣れて、説明会の準備を「小さめ」にしているのが実情。「下町ロケット」の効果はまだ薄いのかもしれません。

成果を出している中小製造業は何をしている?

ただ、それでも巧みに採用で成果を出している中小製造業はあるようです。たとえば、製造業に対して地域行政が積極的に支援する施策を活用して、採用に成功している会社。製造業が多い地域では、採用支援で求人サイトに対しての掲載コストを負担しているケースが増えています。そのサイトで、稼げる資格に対する支援施策など、応募意欲が高まるような職場環境をアピールし、人材採用に成功するケースもあるようです。

あるいは効果的なのが「実績」を活用した採用。過去に採用実績のある大学の就職課への個別訪問で「卒業生が当社で活躍しております。みなさまの応募をお待ちしております」と学内説明会を開催。大企業は個別の大学にアプローチする採用活動に積極的ではないので、小回りのきく強みを生かして採用につながるケースがたくさんあります。

また、製造業は職場が都心にないとか、体力のいる仕事がかなり含まれる……などオフィスワーク中心の会社に比べて、不利に見えがち。ただ、その前提を隠しても学生には見透かされます。あえて、田舎で空気がいいとか、家賃が異常に安いとか、農家が野菜をくれるなど、職場の本当のことをつまびらかに開示することで採用に成功している製造業が増えてきます。加えて、モノづくりの魅力を如何に伝えるか? たとえば、

I like my job,dislike work

と「仕事の内容は嫌いだが、職業自体は好きだ」ということわざがあります。仕事より職業のほうが専門性を感じますよね。製造業で働く人は仕事より職業としてプライドをもっている人が多いのが特徴。そのプライドを伝えることは学生にとって大いに魅力ある職場に見えることでしょう。いずれにしても、人材採用のために果敢な姿勢を示せば、意外とチャンスはあるというのが実情ではないでしょうか? 「下町ロケット」のように熱い思いをもって、人材確保を実現したいものです。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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