「渋谷ヒカリエ」に賭ける東急のまちづくり戦略 人が動くと、カネが動く
ターミナルでもあり、通過点でもある渋谷--。「人が動くところ、カネも動く」という経済原則からいえば、これを放っておく手はない。「渋谷の将来」を早くから憂えていたのは、気性の激しい“鉄道王”だった。
かつて五島慶太は、渋谷駅の乗降客があまり街に立ち寄らず、通過・乗り継ぎ客が多いことを心配していたという。
「人がいっぱい集まる銀座に負けない街を造れ。統計データでは、銀座の客の平均滞在時間は45分。それに引き換え、渋谷はわずか5分。これを何とかせねば--」
■東急文化会館 提供:東急電鉄
その思いが、56年の新しい形のアミューズメントセンター「東急文化会館」建設につながった。渋谷パンテオン等の大型映画館、五島プラネタリウムが話題を集めた。しかし、時代は移り、客の好みも大きく変化し、2003年に閉館--。
大型複合商業施設「ヒカリエ」は、そのDNAを引き継ぐ形で誕生したと言っていい。
「ヒカリエ」は、場所も東急文化会館跡。地上34階、地下4階。直結する新地下駅の設計は安藤忠雄氏。駅周辺のインフラ整備には渋谷区の全面協力を得て、防災対策にも力を注いだという(駐車場スペースは402台分)。
まず、商業施設。東急百貨店が運営する「ShinQs シンクス」は地下3階から地上5階まで。合成語シンクスの解読はややこしいが、「Shibuya」の街に「輝きShine」をプラスし、光を届ける東急(Q)の意、未来志向を込めたのだという。
■シンクス
地下から地上階へと順に、食品、美容、ファッション、ライフスタイル関連の多彩な売り場が並ぶが、いずれも20代後半から40代の経済力のある女性をターゲットとしたコーナー。
道玄坂側の「109」とは造りをはっきり分けて、脱ギャル路線を目指している。6、7階はレストラン&カフェ。横浜、京都、大阪、福岡、沖縄、南イタリア等各地から参加の計26店が味を競う。