2023年には過去最高の売上も…ヤマハがゴルフ用品事業"完全撤退"の限界と誤算――中堅メーカーが直面した「質」だけでは越えられない壁
ゴルフ用品市場に詳しいゴルフ用品界社社長の片山哲郎氏は、「国内中堅規模のメーカーは、独自路線を作らなきゃいけない。ヤマハはプロマーケティングをずっとやってきたが、ここはキャロウェイ、ピン、テーラーメイドといった海外ブランドの独壇場。あのサイズ感で勝負を挑んだのが厳しかったのでは」と分析する。
筆者もかつてゴルフメーカーに在籍していたことからよくわかるが、ゴルフツアーへの露出は用具の性能証明にもなり、販促に役立つ一方、同時に契約費、帯同、販促、店頭施策など“固定費の塊”でもある。片山氏も「グローバルで見ると(ブランド力が)弱く、コストを回収できない。ヤマハ自身もどこかのタイミングで抜け出したかったはず」と見ている。
規模でみると、海外ブランドは世界をマーケットとし、売上は二桁違う。情報公開しているキャロウェイの2024年12月期のゴルフ用品の売上収益は、13億8200万ドル(約2086億8200万円)である。
まねできなかった“勝ち筋”
その一方で、片山氏は同じ“中堅でも勝ち筋を作った例“を挙げる。
「見本は、女性用ゴルフ用具を扱うグローブライドのオノフレディ、マルマンを買収したマジェスティゴルフの超ハイエンド路線など。二番煎じではなく、ヤマハならではの路線を早い段階で築くべきだった」
中堅が生き残る条件は「規模」ではなく、「独自の世界観」であるという指摘だ。
撤退の背景には、売り方の地殻変動もある。あるゴルフショップオーナーに聞くと、「今のクラブ販売は“事前予約”を軸に回っている。事前予約を成立させるには、試打クラブの大量投入、販促、露出、物流、説明力がいる。資本力や展開力が整ったメーカーでないと、売り手側の訴求が難しい」と話す。
資本力のある海外ブランドは、この点でも強みを発揮している。つまり、良い商品を作るだけではだめで、いかに「発売前に、売り切る仕組み」を持つかが勝敗を分けている。
現場が口を揃えるのは「ヤマハのモノはいい」という評価である。だからこそ撤退が残念である。
良いクラブが売れないのではなく、売るための投資と仕組みが必要だ。そういう意味では、ヤマハは“楽器メーカーらしい品質”を積み上げてきたが、用品の勝負が「開発」から「販売のやり方」へ比重を移すなかで、採算を合わせるのが最も難しい地点に立たされた。
ゴルフ用品は技術だけで勝てる市場ではなく、新製品を毎年きちんと投入し、売り場で目立たせ、試打の機会を作り、フィッティング体制や情報発信も整え、ツアーでの露出を積み上げなければならない。
これらはすべて“投資体力”が必要で、世界的な大手ブランドは、投下できる金額の桁が違う。市場が横ばいでも、強いブランドは売上を伸ばし、中堅以下は「勝ち筋」を作りにくい。今回の撤退は、まさにその構造を映しているといえる。


















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