「夫は病院を、息子は自宅を勧めるけど…」 延命治療を拒否した妻が《最期の場所》を悩む理由

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当初は家族に迷惑をかけたくないという言い方をしていた節子さんが、一晩考え続けた今、入院は自分の問題だと言う。これはやっぱり、家族のことを思って出た言葉のような気がした。家族に自責の念を背負わせないように考え抜いて、こういう境地にたどり着いたのではないだろうか。

家族に迷惑をかけたくないからーーという言葉は、実は言われた家族が傷つく言葉でもある。自分の言動や態度が圧力になって本人の望んでいないことを強いてしまったのだろうかと、重い後悔がのしかかるのだ。

特に日ごろから“最後はどう死にたいか”ということを家族間で話し合う機会がなかった家族ほど、家族の死を迎えてしまった場合、本人も家族も相手を思う気持ちが迷走して、思いをうまく伝えられないことが多い。

入院の話は結論を出さず、節子さんの気持ちを聞くだけにした。

呼吸の苦しみと体のしんどさを軽減させるために、アンペック座薬を朝晩に使うことにする。ほんの少量のモルヒネ座薬だ。今の節子さんのような状態のとき、すごく効果を発揮するので使うことが多い。

「家にいたい」というのも本音

その日の午後、長男の靖人さん一家とケアマネージャーの内堀さんがいっぽに来てくれて、外来診察室でゆっくりと話し合いが行われた。靖人さんサイドから見た節子さんと次郎さんの様子や靖人さん夫婦の思いを詳しく聞かせてもらった。

僕は節子さんを訪問して感じたことを率直に話した。

節子さん本人は入院するかどうかを自分で決めると言った。「家族に迷惑かけたくない」というのは掛け値なしの本音だろう。そして「家にいたい」というのも本音。

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