"日本の防災"が抱える欠陥!? 「善意の混乱」にどう対処するか——危機対応のスペシャリストが伝える「国難級災害への備え」

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国は、防災庁の設置を今年中に目指すという。

これについて秋冨さんは「本気でやる気にならなければ、内閣府の防災の横滑りの組織で終わってしまうのではないか」と危惧する。そのうえで、「防災庁が本当に機能するためには、予算や人員以上に、平時から実災害まで一貫してICSで運用される権限を持つことが不可欠」と話す。

冒頭の学会で、秋冨さんは東日本大震災の様子をこう話していた。

「死にかけた人がいて、医療者が救助にあたっていたけれど、警察も、消防も、自衛隊も来ない。片っ端から省庁にも電話をかけたが、つながらない。防災ヘリは消火活動にあたっていて、救助まで手が回らない。津波や崖崩れで道路が至るところで寸断されている。陸もダメ、空もダメ。そういうなかでオペレーションをしなければならない」

経験を教訓にできる国づくりを

昨年12月に公表された中央防災会議・首都直下地震対策検討ワーキンググループの報告書「首都直下地震の被害想定と対策について」によると、<冬・夕方・風速8m/s>で地震が起こった場合、死者数は1.8万人、負傷者数は9.8万人。

昨年3月に公表した、南海トラフ地震の報告書(南海トラフ巨大地震最大クラス地震における被害想定について)では、東海地方が大きく被災するケースでの死者数は、約12万6000~24万7000人、負傷者は約33万~34万6000人(いずれも冬・深夜を想定)、避難者数は最大で約650万人(1週間後)としている。

南海トラフや首都直下地震は、「制度が整ってから起きてくれる災害」ではない。秋冨さんは20年間同じことを伝え続けている。

「そのときに適切なオペレーションができなければ、国は衰退します。経験を教訓にできる国づくりを進めないと」

秋冨 慎司 / 金沢医科大学 救急医学講座 特任教授/救命救急科 科長・救急医療センター部長。石川県医師会参与、医学博士・工学博士
2002年兵庫医科大学卒業。大阪府立千里救命救急センターでチーフレジデントとして救急医としての基礎を築いた後、済生会滋賀県病院、東京大学医学部附属病院、岩手医科大学、そして防衛医科大学校では救命救急センターの准教授として、救急・集中治療、外傷診療に携わる。
JR福知山線脱線事故(05年)、新潟中越沖地震(07年)、岩手宮城内陸地震(08年)では現場・統括として対応し、11年の東日本大震災では岩手県庁災害対策本部の医療班長として、超急性期の救助から避難所支援、復興初期までを指揮した。
臨床の最前線での経験を基盤に、災害医療・危機管理・医療情報の分野で研究と制度設計に取り組む。日本医師会救急災害医療対策委員会委員、内閣府日本版ICS有識者検討委員会委員、総務省・内閣府の防災データ関連委員などを歴任。医療と工学を横断する研究により工学博士号も取得し、ICTやデータを活用した災害対応体制の構築に携わってきた。
24年の能登半島地震では、日本医師会からの派遣で石川県医師会参与として全国から派遣されたJMATの活動を支援。臨床現場に立ち続ける救急医としての視点を大切にしながら、「想定外でも機能する危機管理体制」を社会に実装することをライフワークとしている。
【前編をあわせて読む↓↓】今や生活の必需品「スマホ」がつながらなくなったら…!
国難級災害で"スマホ圏外"の怖さ。能登半島地震の教訓から我々はどう考え、備えるべきか
鈴木 理香子 フリーライター

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すずき りかこ / Rikako Suzuki

TVの番組制作会社勤務などを経て、フリーに。現在は、看護師向けの専門雑誌や企業の健康・医療情報サイトなどを中心に、健康・医療・福祉にかかわる記事を執筆。今はホットヨガにはまり中。汗をかいて代謝がよくなったせいか、長年苦しんでいた花粉症が改善した(個人の見解です)。

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