"日本の防災"が抱える欠陥!? 「善意の混乱」にどう対処するか——危機対応のスペシャリストが伝える「国難級災害への備え」

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能登半島地震では一部、ICSによってオペレーションがなされた。

秋冨さんは、マイクロソフト社の協力で、Teamsというコミュニケーションツールとさまざまなアプリを用いて部隊運用のためのシステム「FA-SYS」を作成。それにより、バラバラだった組織、部署、情報、伝達ツールを1つに集約した統合運用を行い、現場対応に生かした。

FA-SYS
能登半島地震の際はTeamsなどさまざまなアプリを用いて作成したシステム(FA-SYS)が運用された(画像:秋冨さん提供)

詳細はここでは触れられないが、これによって「災害の見える化」ができ、「誰が、何をするか」が明確になったという(なお、同システムは、25年度のグッドデザイン賞を受賞した)。

災害時に的確な情報を得ることがいかに難しいか

ところで、ICSのなかには情報収集・広報活動に関する部署も独立して存在している。

前回の記事では、災害時の通信インフラの問題について紹介したが、有事の際はあまたある情報のなかから、リアルタイムで、かつ必要な情報をどう取るかが大きな問題となり、ときには人命にもかかわってくる。

実際、19年からのコロナ禍では、デマ情報や臆測でしかない情報が飛び交って、混乱が生じたのは、記憶に新しい。

「今の日本には、それぞれの組織が得た情報をほかの組織と共有するしくみが乏しい。だから警察が持っている情報を消防が持っていないとか、その逆とか。ICSには情報を一括して集める部門、その情報を精査・発信する部門が設けられている。現場は、そこにアクセスすることで、最新の情報を入手することができるというわけです」

自然災害がコロナ禍のパンデミックとは違うのは、支援者はこれまで行ったこともない、見も知らぬ土地で、救助活動などを行わなければならないことが多い点だ。通信障害でGoogle mapには頼れない。地元の事情や危険なエリア、道路がどこかわからなければ、二次災害の恐れもある。

情報には「正しいかどうかわからないけれど、すぐに発信したほうがいいもの」と「精査したうえで、発信したほうがいいもの」に大きく分かれる。どの情報がどちらに当たるかも、ICSの枠組みの中にいる専門チームが行うことで、有用な広報が可能になるという。秋冨さんは、「20~30人規模の分析班が必要」と話す。

能登半島地震では内閣府が主導するプロジェクトの1つ、基盤的防災情報流通ネットワークのSIP4Dが運用された。これは、「災害対応を行う様々な機関が保有する情報を『相互に共有』することで、対応機関間の『状況認識の統一』をはかり効率的な災害対応を実現するための情報流通基盤(ホームページより)」だ。

だが、適切な情報共有がされるまでに時間がかかるなど、課題を残した(「令和6年能登半島地震を踏まえた 災害対応の在り方について」より)。実際の現場では、「“信じて行ってみたら、通行止めだった。工事中だった”という声もあった」(秋冨さん)そうだ。

的確な情報を得ることの重要性は、こんなところにもあった。

「能登半島地震では高齢者施設の『長寿園』に支援に入ったのですが、1週間後に同じように長寿園に支援が欲しいという依頼があって。その数日後にも……。おかしいと思って調べたら、長寿園という名称の施設が7カ所あったんです。これも知らない土地だからこそ起こったことです」

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