"日本の防災"が抱える欠陥!? 「善意の混乱」にどう対処するか——危機対応のスペシャリストが伝える「国難級災害への備え」
「NIMSでは、国のトップからボランティアレベルまでが、組織の枠組みを超えてICSに則って運営がなされる。これの日本版を作る必要がある」と秋冨さんは言う。
「東日本大震災のときもそうでしたが、日本は縦組織で、横のつながりがめちゃめちゃ薄い。例えば、医療分野1つとっても、赤十字があったり、JMATがあったり、DMAT(災害派遣医療チーム)があったりするけれど、結局、彼らにどういう能力があって、何ができるかがお互いにわかっていない。それを統合するシステムがないから」
日本でICSが根付かなかった背景には、平時と有事を切り分け、責任の所在を曖昧にしてきた行政文化がある。
その結果、仕事の内容が重複するだけでなく、抜け落ちるところも出てくる。それが冒頭で述べた「対応の遅れ」につながる。日本の防災は、個々の努力や献身に支えられてきたため、善意が多いほど現場が混乱するという、構造的な矛盾を抱えている。
ICSを作ることでスムーズな運用が可能になることは先に述べたが、それによるメリットがある。その1つとして、秋冨さんは「想定外の対応に注力できる」ことを挙げる。
「実は、災害で起こる問題の8割は共通している。だから、標準化して初期対応の8割をICSで対応できさえすれば、残りの2割を想定外の事象対応に集中させることが可能になる。日本は想定内に対応する『リスクマネジメント』は得意ですが、想定外に対応する『クライシスマネジメント』が苦手。だからこそ、ICSを作る意味がある」
アクシデントを「ヒューマンエラー」にしない
ほかにもメリットがある。例えば、何かアクシデントが起こったときに、それが「ヒューマンエラー」ではなく、「システムエラー」になるという点だ。
「ICSは組織ではなくファンクション(機能)なので、問題があった部分の機能を改善したり、差し替えたりすることができる。トライアンドエラーでよりよいシステムにしていけばいいだけのことなんです。結果、これまで日本の組織で行われてきたような、“トカゲの尻尾切り”はなくなるでしょう」
機能として働くということは、同時に「個人によってオペレーションが左右されない」という意味でもある。
「災害現場では、熱い思いを持った1人の声で現場の支援の仕方が変わることは、よくあること。ただ、それが結果として、現場を混乱させてしまうことも多い。こうした問題もシステムにすることで、防ぐことができます」
ほかにもシステム化することでDX化が可能になり、災害現場から遠い場所からの支援も可能となる。
もちろん、ICSを導入すればすべてが解決するわけではない。人材の育成や訓練などが伴わなければ、単なる“看板”に終わる。しかし、それでもなお、ICSは「失敗を構造として修正できる」枠組みといえる。


















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