ソフトバンクグループ、O2O市場ナンバーワンを狙う孫社長の新たな野望(前編)《O2Oビジネス最前線・黎明期を迎えた新・消費革命》

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喜多埜氏は、O2O市場ナンバーワンへの意気込みをこう語る。「これまで分断されていたソフトバンクとYahoo! JAPANの連携を強化する。スマートフォンを提供するソフトバンクとオンラインで情報を提供するYahoo! JAPAN。2社の連携強化の道具の1つになるのが、『PayPal Here』だ。両社にとってプラスとなる」。

喜多埜氏は12年3月まで、Yahoo! JAPANのCOO(最高執行責任者)を務めていた。同社のO2Oプロジェクトを責任者として牽引し、Yahoo!JAPANの地域関連の7つのサービスを、日本最大級の位置情報サービス「Yahoo! ロコ」に統合した実績を持つ。

「Yahoo! JAPANの会長でもある孫からは、もっとリアルの領域に関与していくべきだと2~3年くらい前から言われていた。O2Oというキーワードが世に出てきた本当に初期の段階からだ」と喜多埜氏は振り返る。

孫氏がO2Oを強く推進する理由は、何もオンラインには先がないという危機感からではない。「約8兆~9兆円といわれるオンライン市場は今後まだまだ伸ばしていけと言われている。ただ、オフライン市場は約140兆円ともいわれ、オンラインとは比較にならないほど巨大。もっと関与できるのではないか。すでにこれまで関与してきた部分もある。今夜食事をしようといったときに、Yahoo!ロコで探し、場所を確認し、路線を調べ、Yahoo!グルメなどで、クーポンを得るなどしてきた」(喜多埜氏)。

さらに目指すその先に描くO2Oは何なのか。

オフラインの世界から得られる膨大なデータ

「送客の部分は取り組んできたが、その先がわからなかった。ネットで調べた後、ユーザーが本当に来店したか、お店で何を食べたのか。ここがわかると、ユーザーに対して次回へのより良いレコメンドが可能となる。お店側もまた来てほしい特別なお客には、一律5%引きのクーポンではなく、そのお客向けの特典10%引きのクーポンを渡すとか、さまざまな販促施策が実施できる。このような世界観をつくっていくのがソフトバンググループの描くO2Oのグランドデザインだ」と喜多埜氏。

ここに、PayPal Hereを新たに組み込む必要があった理由の1つがある。喜多埜氏は、PayPal Here導入で得られる重要な価値について次のように話す。

「カード決済手数料の5%から得られる収益はもちろん欲しい。だが、それよりも、後々重要になるのはおそらくデータのほう。どんなお客が何人で来て何をいくらくらいで購買したか、といったデータだ。オンラインの世界では、オンライン上のログが取れていて、ターゲティング広告に生かしている。たとえば、Yahoo! JAPANでも女性向けの広告などをすでに販売している。データはあればあるほどターゲティングできる。オンラインだけではなく、オフラインのデータも合わせて取れるようになると、より多くのデータが取れる。“ビッグデータ”になる」

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