民間債務は資産を生み出す中心的なメカニズムだが、それが行き過ぎると「金融化」と呼ばれる現象を引き起こし、やがて経済成長を鈍化させる。
2008年の危機以降、多くの家計や企業が高額の負債に呻吟し、支出や投資が抑制されたことが、その後の生ぬるい回復の一因となった。
家計の収入に占める債務返済額の割合は、戦後の高度成長期と比較して今や30%も高くなっているのだ。
格差拡大という「副作用」
債務をめぐる最大のパラドクスは、それが家計全体の資産を増大させる一方で、同時に深刻な格差をもたらす点にある。
民間債務が増えれば増えるほど、その資金は株式や不動産といった資産の価値を押し上げる傾向がある。これらの資産を大量に保有しているのは人口の上位層であるため、債務による資産増の恩恵は偏った形で富裕層に蓄積される。
一方で、中低所得層は資産をほとんど持たないまま、日々の生活を支えるための負債をいびつな割合で担わされることになる。
「借金が増えるほど私たちは豊かになる」というのは、会計学的には一面の真実である。
しかし、その「豊かさ」の中身を精査すれば、一部の人々に資産が積み上がる一方で、大多数の人々が負債の重圧に耐えるという不均衡な構造が露わになる。
私たちが向き合うべきは、政府の赤字という見かけ上の数字ではない。債務がどのように資産を作り上げ、誰に分配されているのか、そしてその負債の連鎖がいつ臨界点に達するのかという「負債の経済学」の実態なのである。
債務は創造者であると同時に、制御を誤れば社会を壊す破壊者にもなり得るのだ。
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