「草の根」に分け入り現実をとらえよ--『あなたの中のリーダーへ』を書いた西水美恵子氏(ソフィアバンク・パートナー、元世界銀行副総裁)に聞く

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──3月まで山形県庄内にある大学の客員教授を務め、日本の観光のあり方にも一家言をお持ちですね。

私の夫は英国人だが、庄内のすばらしさにほれ込んでしまった。だが、外国人の目線で見ると、そのすばらしさを生かし切れていないという。観光戦略に「ハイバリュー・ローボリューム」というのがある。誰彼構わず来てほしいわけではなく、価値を評価して、たくさんおカネを落としてくれる人たちをつかむ。庄内は、それに値する地域だ。

──よく訪れるブータンと同じ評価ですか。

そう。その位置づけをしっかり見極めて、庄内は「ハイバリュー・ローボリューム」戦略を追求するといい。欧米に限らず、最近はインドやブラジルの富裕層もバカンスで高級リゾートに行く。こういう層が狙いどころだ。庄内だけではない。日本にはそれを狙える地域がたくさんある。戦略の「せ」の字も持たない観光庁などに任せず、民間でリーダーシップを取って地元の人たちと知恵を出し合うといい。

──「草の根」を知らなすぎますか。

厚生労働省で若い人に話をしたことがある。後期高齢者医療制度が議論されていた頃だ。高齢者になりきった車いすの生活、1日1円でも無駄にできない、あるいは目の見えない生活、それを24時間でも体験してから制度や法律を考え直しては、と。これは政府であれ、世銀であれ、どんな商売でも同じだ。その原点見直しのお手伝いができればと思っている。

にしみず・みえこ
大阪府生まれ。高校在学中、交換留学生として渡米し、ガルチャー大学を卒業。ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程(経済学)修了。プリンストン大学経済学部助教授などを経て、1980年世界銀行入行。2003年南アジア地域担当副総裁を最後に退職。米ワシントンDCと英領バージン諸島に在留。

(聞き手:塚田紀史 撮影:今井康一 =週刊東洋経済2012年6月9日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。


『あなたの中のリーダーへ』 英治出版 1680円 213ページ


  
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