重要なのは、中目黒が「不便な街」だということではない。むしろこの街は、若いシングル層やDINKS層を主な生活者として想定し、そのライフスタイルに最適化されてきた街だと言える(そう言えば、『最高の離婚』の主人公夫婦2組も、DINKSだった)。
中目黒が「おしゃれな街」として語られる背景には、こうした可視化されにくい不便さが、あらかじめ織り込まれているという事情がある。「どこにでもある便利さ」を求めない人にとっては、この街の構成はむしろ魅力的に映るだろう。
ただし、その選択ができるのは、時間や金銭、生活設計に一定の余裕がある層に限られる。
「おしゃれ」とは、万人にとっての快適さを意味しない。中目黒が持つおしゃれさは、条件付きで成立する評価であり、その条件を引き受けられる人にとって、魅力的に機能する街なのである。
中目黒は「条件付き」で成立する街
中目黒は、誰にでも開かれた日常を提供する街というよりも、一定のコストや不便さを引き受けられる人にとって、魅力的に成立する街だと言える。
芸能人が街に溶け込んで見えるのも、彼らが特別だからではない。この街自体が、「仕事と生活」、「非日常と日常」の境界を自然に曖昧にできる構造を持っているからだろう。
一見すると「意外と普通」に見える中目黒だが、この「普通さ」は、誰にでも同じように成立するものではない。
中目黒の「おしゃれさ」は、派手さや分かりやすい成功の象徴としてではなく、主張を控えられる余裕として街に表れているように見える。だから中目黒は、キラキラしているのに騒がしくなく、セレブなイメージがありながらも、どこか落ち着いた印象を与えているのだろう。
中目黒とは、一定の条件を満たした人々が「普通に暮らす」ことで成立してきた、きわめて限定的な東京の日常なのだ。


















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