その象徴が、16年に誕生した「中目黒高架下」だ。
東急電鉄と東京メトロが共同開発したこの施設は、約700メートルにわたって飲食店やオフィス、ブックカフェなどが軒を連ねる。かつての駅前にはなかった「歩行者動線」と「滞留空間」を街にもたらし、日々の生活動線そのものをトレンドと結びつける装置として機能し始めたのである。
こうした再開発は、決して一朝一夕に成されたものではない。駅前の「中目黒ゲートタウン(02年開業)」や、目黒川沿いにそびえる「中目黒アトラスタワー(09年竣工)」は、もともとあった住宅や町工場が密集していたエリアを、権利者たちが中心となって長い歳月をかけて整備してきたものだ。
つまり中目黒では、「労働と生活の街」という下地の上に、計算された都市空間が段階的に重ねられてきた。その上に、ドラマや雑誌、SNSといったメディアの演出がのり、「ナカメ」というおしゃれなイメージが完成していったのである。
「芸能人の街」という言葉の裏にある経済条件の現実
もう一つ見逃せないのが、経済的な条件である。
目黒区は、23区内でも高所得層の割合が高いエリアとして知られている。リクルートの「住みたい街ランキング2025」でも、中目黒は総合20位、東京都民ランキングでは13位に入り、特に20〜30代のシングル世帯から安定した支持を得ている。
人気の背景には、立地やイメージだけでなく、一定の経済力を前提とした住環境がある。実際に中目黒駅周辺の家賃相場を見ると、ワンルームでも10万円を超える水準が一般的だ。街を歩けば、築年数の古いアパートと高級マンションが隣り合い、表面的には「多様な層が共存している」ようにも見える。


















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