人類が文字を生み出したのは「会計」のためだった!? とっつきづらいイメージの会計が、実は人間の根源的な営みだという納得の理由
そこで、賢いシュメール人は「二重記録」を考案しました。
ボール状のブッラの表面に、今回の取引に使うトークンをひとつひとつ押しつけて印をつけておきます。
それからボールの中にトークンを入れて封をすれば、トークンの数を取引の途中でごまかすことはできず、またボールを割らなくても中身がわかるというわけです。
このトークンの印が、のちにウルク古拙文字、そして楔形文字に発展していきました。
中国の漢字の起源である甲骨文字は占いや政治の記録だったとされますが、シュメールの文字は「会計」から始まりました。
文明を発展させるのに不可欠だったのが文字だとすれば、その文字と同時に生まれた会計もまた、私たちの文明の基礎を支えるものです。
古代から現代にいたるまでずっと、会計は地球に生きる文明人にとっての基本的な営みだということがわかります。
しかし、誕生したばかりの文字を読むことは誰にでもできることではありませんでした。そのため、文字を記録したり読んだりする、書記官という国家選任の専門職が存在しました。
こうした書記官は、ある意味、国家選任の会計記録者ともいえます。つまり、シュメールでのビジネスにおける会計記録は、第三者によっておこなわれたということになります。
現在、たとえば企業の会計データはその企業に勤める経理担当者によって作成されるので、それが捏造でなく公正なものであることを保証するために、公認会計士による監査を必要とします。
ところが、公認会計士の監査費用は企業が出すのですから、完全に公正な監査ができるとは言い切れません。
第三者による客観性という点では、会計データが国家選任の書記官によって作成されるシュメールのしくみの方が、現代よりも進んでいるともいえるのです。
15世紀イタリアで完成した複式簿記
このように、会計にとって最初の機能は「記録」でした。
世界史から日本史に目を向けてみても、7世紀後半の飛鳥時代から奈良~平安時代前期には、唐から輸入した「租庸調」という税制がありました。ここでも、シュメールのトークンを思わせるような道具が使われています。
米や布などを運ぶときに、中身や数などを記した「木簡」をそれぞれの箱につけていたのです。
納税された箱を倉庫に収めた役人は、その木簡だけを手元に集めれば、いちいち箱を開けてみなくても、何がどれだけ倉庫にあるかを確認できました。
そういった素朴な会計の「記録」機能は、長い歳月を経て、「複式簿記」というスタイルに発展します。遅くとも13世紀後半にはイタリア商人は複式簿記を使用していました。


















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