久光製薬が非公開化を決断、今後予想される製薬業界「脱上場」の波

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久光製薬が経営陣による買収(MBO)を通じて非公開化する計画を明らかにしたことで、今後は国内製薬業界における「脱上場」の動きに注目が集まりそうだ。アナリストは久光薬が典型例になると見ており、さらに多くの企業が追随すると予想する。

製薬企業は、短期的な視点で業績判断する投資家と、政府が主導する薬価引き下げの二重の圧力にさらされている。コスト削減や事業再構築、長期投資に向けた経営の柔軟性を高めるために、脱上場を選択することは十分な理由になる。

過去2年間では、田辺三菱製薬と大正製薬ホールディングスが株式公開買い付け(TOB)によって脱上場を果たした。アクティビスト(物言う株主)のダルトン・インベストメンツはあすか製薬ホールディングスに対して、「非公開化を含むあらゆる経営の選択肢検討と意思決定」を行うよう促している。

創業家出身の中冨一栄社長が主導する久光薬のMBO計画は、業界内では最大級の取引の一つで、報道が伝わると株価は2日間で38%上がった。ジェフリーズ証券アナリストのスティーブン・バーカー氏は6日付メモで、低いバリューで取引されている銘柄の見直しにつながる可能性があると指摘。さらに、「久光薬の動きが特例ではなく、製薬業界における非公開化への広いトレンドの一部かもしれない」と記した。

ジェフリーズ証券によると、6日時点で株価純資産倍率(PBR)が1倍を下回る製薬企業は12社ある。調査対象銘柄の3分の1を占めることから、一部が深刻な割安状態にあると示唆される。買収候補としては、バリュー面からキッセイ薬品工業、親子上場の観点から協和キリンと住友ファーマが挙げられるという。

買収や再編に伴う脱上場が増えたことで、昨年の東京証券取引所の上場企業数は減少数が最多になった。

慶応義塾大学大学院の中村洋教授は、金利と借り入れコストの上昇で投資家や企業は資金調達でより高いコストの負担が求められると話す。財務的に厳しくなる可能性があり、決断は「早ければ早いほうがいい」とする。一方で、「MBOは一つの手段。その次の戦略が見えていないと失敗する可能性もある」とくぎを刺す。

高齢化社会における医療費抑制と国民皆保険制度の維持のため、政府は処方薬の価格引き下げと安価なジェネリック医薬品の普及を推進している。市販薬と成分や効果が似通う処方薬について患者に追加の費用負担を求める政策も、同社にとって逆風となる可能性がある。

国内競争の激化に直面する久光薬は、成長回復のために海外市場への展開を加速する。6日の発表では、処方薬事業における価値最大化、マイクロニードル技術を用いた薬剤開発、一般用医薬品事業の構造改革、電子商取引における他社連携の視野などに力を入れていくと示された。

米L.E.K.コンサルティングのパートナー、パトリック・ブランチ氏は、「中小企業では確実に今後も続くだろうが、おそらく大企業でも起こるだろう」と指摘。「適切な経営陣の不在や、経営再建に必要な資本不足、また正しい方向に進んでいない企業もある」と述べた。 

著者:松山かの子

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