まず、皆さんが美術館、とくに現代美術館に行かれた際に抱く「わからない」という感想についてです。私自身、東京都現代美術館に勤務していますが、来館者の方から「よくわからない」と言われることは日常茶飯事です。
でも、あえて言わせていただければ、「わからなくて当たり前」なのです。
「モダン」と「コンテンポラリー」決定的な違い
なぜなら、現代美術というのは、それまでこの世界に存在しなかったもの、誰も感じたことのない感覚、あるいはまだ社会が共有できていない可能性を提示する「実験の場」だからです。
もし、多くの人が見た瞬間に「ああ、わかった」と理解できてしまうなら、それはもはや現代美術としての役割を終えている、あるいは「別の何か」になってしまっているともいえます。
現代美術を鑑賞する私たちは日々、この「わからないもの」と格闘しているわけです。
では、その「わからないもの」とどう対峙すればよいのでしょうか。その手がかりとなるのが、美術の歴史、特に「モダニズム(近代主義)」の流れを知ることです。
『全人類の教養大全 2』では、芸術の歴史を大きく「古典主義」「ロマン主義」「現代美術」の3つに分けて説明しています。
古典主義は、理性を通して世界を構築的に描く時代。ロマン主義は、個人の内面や個性を尊重する時代。そして現代美術は、「すでにあるものに対する拒否と、新しいものの追求」と定義されています。
ここで1つ補足しておきたい重要な視点があります。それは、ロマン主義と現代美術のあいだにある「近代美術(モダンアート)」の存在、そして「モダン」と「コンテンポラリー」の違いです。
私が勤めている東京都現代美術館は英語で「Museum of Contemporary Art Tokyo」といいます。一方で、千代田区の竹橋近くにある東京国立近代美術館は「The National Museum of Modern Art」です。
「モダン」と「コンテンポラリー」。どちらも日本語に訳すと「現代」という意味を含んでいますが、美術の世界では明確に使い分けられています。


















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