日本の金融教育で教えてくれない「いちばん大切なこと」/商品や制度の説明に終始する現状、真に役立つのはシンプルで明確な「行動のルール」だ

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日本でも金融教育の熱は高まっているが、そこには大きな「不足」が生じている(写真:Luce / PIXTA)

2025年、日本の株式市場は堅調な上昇を続けた。日経平均株価は史上最高値を更新し、NISA(少額投資非課税制度)の普及も相まって、投資への関心はかつてないほど高まっている。

一方で、物価上昇は家計を直撃し、預貯金だけでは資産価値が目減りするという現実が、多くの人々に突きつけられている。「貯蓄から投資へ」はもはやスローガンではなく、生活防衛のための必然となりつつある。

こうした環境変化を背景に、日本では金融教育が急速に拡充している。高校では新学習指導要領のもとで授業が始まり、企業では確定拠出年金(DC)を通じた投資教育が日常化している。一見すると、日本の金融リテラシーは着実に向上しているように見える。

しかし、その実態を注意深く見ると、共通した重大な欠陥が浮かび上がる。それは、「なぜ価格が動くのか(メカニズム)」と「人はなぜ誤った判断をするのか(行動特性)」という、金融行動の車の両輪が教えられていないことである。

高校での金融教育の課題とは?

高校の家庭科や「公共」の教科書を見ると、金融商品は主に「特徴の整理」に終始している。限られた授業時間の下では、「預金はローリスク、株式はハイリスク」という分類や、NISA・iDeCo(個人型確定拠出年金)といった制度の名称を伝えることが精一杯であり、それ自体は教育現場の努力の成果である。

しかし、次の段階として求められるのは、「なぜ金利が上がると債券価格は下がるのか」「株価は何を根拠に決まるのか」というメカニズムの理解である。

たとえば、額面5万円、年利1%の5年満期債券を考えてみよう。市場金利が1%のときには、この債券の現在価値は額面どおり5万円である。ところが、市場金利が5%に上昇すると、同じ債券の現在価値は約4万1341円まで下落する。

これは「損」ではなく、新しく発行される高金利の債券と比較されるための「価格調整機能」である。もちろん、満期まで保有すれば額面どおり5万円で償還されるので、途中で売却しなければこの価格下落は実現しない。

このような仕組みを理解していないと、金利上昇のニュースを見て「債券は危険だ」とパニックになり、狼狽売りをしてしまうかもしれない。

制度を覚えても、仕組みを理解しなければ、市場が予想外の動きをした瞬間に冷静な判断ができなくなる。高校教育の先にある「次のステップ」として、メカニズムの理解が不可欠なのである。

次ページでは、社会人教育における課題とは?
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