戦後続けてきた日本の平和外交を今こそ発揮すべきだ、パワーポリティクスと大国外交では日本が滅ぶ(前編)

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習近平と電話対談したトランプが日本に対し「台湾問題をこじらせるな」といったのは、まさにこうした背景があったからである。

日本の平和外交は、アジアの緊張緩和の材料として機能してきたことは間違いない。アジアにおいて軍事や政治で口出しをするのは、中国、アメリカ、ロシア、イギリス、フランスだ。とりわけ中国とアメリカである。そこに第3の日本が介入するとなると、問題はこじれてくる。日本が経済のみならず、政治、軍事において大きな力となることは、中国とアメリカだけでなく、アジア諸国にとっても大きな衝撃となるのだ。

アジアではいつのまにか中国を中心とした経済圏が構築されつつある。経済成長の波に乗っているアジア諸国は、中国が好きだというわけではない。中国経済に乗ることで経済が成長することを望んでいるだけである。

日本はアジアの経済成長を促進できるか

しかし、日本がその中国に代わって経済成長を促進できるのだろうか。国連の常任理事国入りで影響力を高めようと考えているが、常任理事国には大きな負担がともなう。経済、軍事、政治あらゆる負担を引き受けることになるからだ。常任理事国のフランスやイギリスは、常任理事国であるがゆえ、膨大な支出に悩まされ、衰退の道を進んでいる。同じような規模である日本になにができるというのか。

要するに、高市発言後の日本に対して、世界の多くの国は不安を隠せないのだ。西欧諸国とBRICSの対立を戦争へと導くのは、ひょっとすると日本なのか、IMF体制を崩壊させるのは日本なのか、アジア経済を破壊するのは日本なのかと、諸外国は懸念しているのである。

戦後日本は平和外交と小国外交を進めてきた。今ここで大国外交とパワーポリティクスに乗り出すのは歓迎すべきことではない。第2次世界大戦で大敗を記した先人の教訓を肝に銘じるべきである。

(後編「西欧が支配する世界秩序が終わりを迎えている」に続きます)

的場 昭弘 神奈川大学 名誉教授

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まとば・あきひろ / Akihiro Matoba

1952年宮崎県生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。日本を代表するマルクス研究者。著書に『超訳「資本論」』全3巻(祥伝社新書)、『一週間de資本論』(NHK出版)、『マルクスだったらこう考える』『ネオ共産主義論』(以上光文社新書)、『未完のマルクス』(平凡社)、『マルクスに誘われて』『未来のプルードン』(以上亜紀書房)、『資本主義全史』(SB新書)。訳書にカール・マルクス『新訳 共産党宣言』(作品社)、ジャック・アタリ『世界精神マルクス』(藤原書店)、『希望と絶望の世界史』、『「19世紀」でわかる世界史講義』『資本主義がわかる「20世紀」世界史』など多数。

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