戦後続けてきた日本の平和外交を今こそ発揮すべきだ、パワーポリティクスと大国外交では日本が滅ぶ(前編)
戦争そのものを放棄した日本の平和憲法は、世界にも知られている。有事の際に信用できる国が世界であるとすれば、それはスイス、アメリカ、そして日本だ。それは、スイスは永世中立国であり、アメリカは鉄壁の守りをもち、日本はこの平和憲法があるからである。安全と信頼というものがあるとすれば、日本にはそれがあるのである。
今世界は混沌とした状態にある。それは戦後のIMF(国際通貨基金)体制、西欧諸国を中心としたG7(主要7カ国)体制に対する信頼が揺らいでいるからである。その発端はウクライナ戦争にあった。ウクライナ戦争での不利な状況が、軍事的、政治的バランスへの西側の信頼を崩壊させたのである。それはやがて経済における信頼、すなわちドル基軸体制への信頼を崩壊させようとしている。
もっとも安全と見られていたアメリカが信頼を失い。今また日本が信頼を失う。それは戦後体制の崩壊を意味する。だからこそ今回の発言はかつてない衝撃を与えたのである。
1972年の日中共同声明に何が書かれているか
日本国憲法には、98条という項目がある。そこでは、憲法に規定されている内容とすべての法律が矛盾しないこと、国際的条約を順守することが書かれてある。たとえ交戦権を認める法律をつくっても、それが憲法と齟齬をきたし、中国などと取り決めた国際条約を破れば無効となる。
確かに、日本の防衛に関して「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」が、03年に当時の石破茂防衛庁長官のときに作成されていて、そこで存立危機の規定が書かれている。
「存立危機事態 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」
しかし、日本は台湾を日中共同声明(72年9月22日)の中で独立国として承認していない。日中共同声明の中では、こう記されている。
「日本国政府は、中華人民共和国政府が中国唯一の合法政府であることを承認する」


















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