戦後続けてきた日本の平和外交を今こそ発揮すべきだ、パワーポリティクスと大国外交では日本が滅ぶ(前編)
中国政府の怒りは、当然理解の範囲内であったが、欧米においても大きな衝撃が伝わった。もちろん、それは中国政府の懸念とはまったく違ったものであった。
欧米の懸念は、その後出された補正予算に絡んだ、日本の独自の経済政策にも関係していた。
日本の経済政策の余波
世界経済は現在、安倍政権以来続く日本の低金利政策の恩恵を受けている。いわゆるキャリー・トレードである。安い金利で日本から資金を借り受けた世界中の金融機関が、世界中に資本投資をして、AIバブルを創出し、景気を支えている。低利子たる理由は、日本が大量の国債を発行していることから、その利子を上げることが国家予算を圧迫するからである。
低利子そして国家負債の増大は、円の過剰発行と円安を招き、日本国内で物価上昇を生み出している。物価上昇は、国民生活を圧迫しはじめている。
適度なインフレは名目的な税収入と負債の負担を減らすことになるのだが、急激であれば、利子負担が重くのしかかる。しかし、低利子では国債を売りさばくこともできなくなっている。現在の日本政府は、手詰まりの状態に陥っているのである。
一方低金利で借りている外国資本は、金利が上昇すれば利益が減り、危機に陥り、世界経済は混乱するであろう。だから西欧諸国は、日本に利子を上げてほしくない。要するに、日本はいつのまにか、縁の下の力持ち、目立たないが重要な金融システムを支える柱になっているのである。
日本の大規模な補正予算が、国債の割り増しを生み出し、それが利子を引き上げざるをえない状態を作り出せば、キャリー・トレードは縮小し、世界は大恐慌へと進むことになるかもしれない。そしてそれは、戦後のIMF体制を崩壊させる原因になるかもしれないのだ。
だからこそ、台湾問題はその狼煙となったのだ。日本が国際社会の中で表立って活躍すること、またこれまでの平和外交を否定することは、日本がもつ絶大な信用を放棄することになる。
日本の信頼は平和憲法に守られ、世界政治に口出しせず、静かに縁の下で世界経済を支えていることにある。これは勝手な西欧諸国の考えだが、IMF体制下の貿易で独り勝ちをしてきた日本の歴史が、こうした構造を生みだしたのだ。


















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