戦後続けてきた日本の平和外交を今こそ発揮すべきだ、パワーポリティクスと大国外交では日本が滅ぶ(前編)

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高市早苗首相は大国主義的な外交姿勢を見せているが、果たして、それがいまの世界に通用するのか(写真・尾形文繁)

2025年もまもなく終わる。ここで前編と後編の2回に分けて、今現在われわれが置かれている日本と世界の状況について見てみてみよう。当然ながらこの2つは密接に結びついている。

25年11月の高市首相の発言は、日本だけでなく、世界に大きなショックを与えた。その答弁を当時各国で報道された英字新聞からそのまま日本語に翻訳すると、次のようなものだった。

高市:むしろとりわけ台湾というより「別の地域」について、という方がいいでしょう。しかし、その際、この議論は台湾の偶発的出来事を問題にしています。もし、ほかの手段と結びついた戦艦による条件付きの海軍によるブロックを含む、台湾への軍事的攻撃が起これば、軍事力の行使が起こるでしょう。例えば、アメリカ軍がブロックを解除するために介入すれば、そしてほかの軍事力使用がこれを防ぐためにそれが起こればのことです。そうしたシナリオは考えられます。そうした場合、起こる状況は十分に考えられるに違いありません。航行をブロックするために民間の船をただ送ることでは「存立の危機」は継続しません。しかし、海軍のブロックによる現実の戦争、そのほかの事態というコンテキストの中では、事態はこれと異なるものだと考えられます。

交戦権の破棄?

このわかりやすいとも言えない発言が世界に衝撃を与えたのは、日本が日本国憲法9条第1項そして第2項で禁じている紛争解決手段としての戦争と交戦権を、日本の存立が侵された場合、破棄することがありうるというメッセージが含まれていたことであった。

もちろん自衛隊はすでに高度な武器を所有し、日米安全保障条約が結ばれているので、日本が戦争をしないだろうなどとは誰も思ってはいないのだが、明確に戦争をすることがありうることを明言したことは、これまでになかったので驚いたのだ。

世界はこれまでにない緊張関係にある。べネズエラ、中東、ウクライナ、ナイジェリアなどいつ世界大戦の引き金になってもいいような状況にある。戦後を支配した西側先進国の衰退と、中国、ロシア、インドなどで構成するBRICSという新興勢力との戦争は、いつ起こってもいい状況にある。だからこそ、この発言は世界に衝撃を与えたのだ。

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