1人になった卯月さんの部屋には、ボビーさんの遺影と遺骨が置かれている。遺影は、メジャーリーグの優勝決定シリーズ第4戦で、大谷翔平が3本目のホームランを放った瞬間の、ボビーさんのうれしそうな笑顔だ。
実は、大谷がホームランを打つ予感がしており、卯月さんは狙って撮影したのだそう。「うまく撮れたので、遺影はこれにしよう、ってお父さんと決めてあったんです」と卯月さんは笑顔で話す。
肉体はなくなっても、ずっとここにいる
ボビーさんが使用していた介護器具は、業者が回収していったが、車椅子だけは残してほしいと卯月さんが懇願すると、特別に許可が下りて買い取ることができた。思わず涙がこぼれたという。
卯月さんは毎朝、車椅子に座り、ボビーさんの遺影に「おはよう」とあいさつし、タバコを供える。夜は「お父さん、寝るべ」と、遺影を枕元に置いて眠る。
「遺影のお父さんは、笑ったり悲しんだり、いろいろな表情に見えるんです。しょっちゅうなでたり、キスをしたりしていますね。肉体がなくなってしまった寂しさはすさまじいですが、車椅子も残してもらえて、ずっとここにお父さんがいるんだ、と思っています」
卯月さんはこれからも、ボビーさんとの思い出が詰まった今の部屋に住み続けるという。来年夏頃には、生前のボビーさんの希望で、海上での散骨が予定されている。
死はいつか必ずやって来る。自分自身の死も、愛する人の死も。私たちは、そのことをときに忘れ、ときに思い出す。四六時中、死に向き合うことなどできない。
だからこそ、思い出したそのときは、「どう生きたいか?」「誰と生きたいか?」「どんな最期を迎えたいか?」など、真剣に考えてみるのもいいかもしれない。終わってしまう命もあるが、続いていく命もあるのだから。
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