「歩道橋から飛び降りて、顔がぐちゃぐちゃになっても愛してくれた」 《25歳差、唯一愛した人》との別れが、"楽しかった"と言えるワケ

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ボビーさんとは36歳の頃、お互いが行きつけの酒場で出会った。当時、多くの男性が卯月さんに話しかけてきたが、相手にしなかった。これまでに出会ってきた、身体だけが目的の男性、金や権力をかざして近づいてくる男性、だらしのないヒモなどにこりごりしていたのだ。

卯月妙子さん
若かりし頃の卯月さん(写真:卯月妙子さん提供)

しかしボビーさんは違い、卯月さんを容姿で判断することはなく、裏表もまったくなかったという。

「誰にも近寄ってほしくないから、私はいつもお店の隅っこで、1人で黙って飲んでいたんです。そうしたらお父さん(ボビーさん)が、『あなた笑わないね、笑わせてあげよう』って冗談を言って。私が笑うと『やっと笑った』と喜んで、それから話すようになりました。

私が書いた小説を褒めてくれたり、(文芸評論家の)小林秀雄が好きだと言ったら『面白い人だね』って言ってくれたり。お父さんと話すとウキウキしたわけですよ」

おそらくあれが初恋だった、と卯月さんは回想する。生まれてはじめて自分から告白し、2人の交際が始まった。

当時、ボビーさんは61歳で、年齢差は25歳。年が離れているため、ボビーさんは交際に難色を示していたが、卯月さんが家具を持って強引に押しかけ、同棲生活が始まったのだった。

器が大きく、豪快に酒を飲む人だった

ボビーさんを一言で表すと、とにかく「器の大きな漢(おとこ)」だという。

管理職だった勤め先では、あらゆる部署を見て回り、残業を手伝い、部下の悩みを聞き、能力を見抜いて適材適所へ配置した。問題や難しい案件はすべて引き受け、1人で解決した。

飲み屋でも人の相談に乗り、迷惑な客を叱り、気前よく振る舞い、みんなを笑顔にするために冗談を連発。聡明で、人情を大事にし、見返りなど求めず、他者のために尽くす人だった。

卯月妙子さん
自宅でボビーさんと(写真:卯月妙子さん提供)
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