「英語に翻訳し、世界に発信」 朝ドラ「ばけばけ」小泉八雲が怪談『水飴を買う女』に付け足した1行

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

語れば語るほど、語り手の思いが露わになり、聞くほうの心も震える。ドラマでは、怪談を通して、トキとヘブン先生は魂の交流をしているようにさえ見えた。

トキが無類の怪談好きでありながら、話を披露する相手がこれまで見つけられなかったことも、2人の相性の良さを物語っている。

小泉八雲が世界に発信した『水飴を買う女』

『水飴を買う女』の怪談は、ヘブン先生のモデルであるハーンにとっても、よほど印象的だったのだろう。ハーンは「小泉八雲」として執筆活動を始めると、この『水飴を買う女』を英語で書いて、世界に発信している。

『水飴を買う女』の内容は、次のようなものだ。

毎夜遅く水飴を買いに来る女が、あまりに痩せて顔色が悪いので、不審に思った飴屋が女の後をつけてみると、そこは墓地。墓の下から赤ちゃんの泣き声が聞こえてきて、墓を開けてみると、毎晩水飴を買いに来ていた女の亡骸が横たわっているではないか。傍らには元気な赤ん坊の姿があり、水飴の入った椀が置かれていた。女は自分が亡くなってから墓の中で生まれた子供を水飴で育てていたのである……。

ハーンはこの怪談をただ英訳したわけではない。最後の1行として”love being stronger than death”と加えている。次のような意味となる。

「(母親の)愛は、死よりも強かったのである」

ハーンの母はローザ・アントニウ・カシマチというギリシャ人で、アイルランド人でイギリス軍医のチャールズと駈け落ち同然で結婚すると、レフカダ島で新婚生活をスタートさせた。このときすでにローザは子を宿しており、それがハーンだった。

ハーンと母のローザは、やがて父の実家アイルランドのダブリンへと身を寄せるが、父は仕事でグレナダに駐在しており、なかなか会うことができなかった。孤独感にさいなまれたローザは祖国に帰国。ハーンはたったの4歳で母と離れ離れになってしまう。

次ページそれでも母の愛を信じて…
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事