築80年弱でずっと現役!日本最古の団地が移住者向けの入居募集を開始。まだまだ使える団地のすごさを見てきた

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施工にあたったのは竹中工務店。当時静岡市内にはコンクリート打ちの技術を持っている会社が少なかったため、団地建設には市内事業者の育成という意図もあった。大手建設会社と協業することで学ばせようというわけで、となれば竹中工務店としてはいい加減なものを作るわけにはいかない。

団地見学時に配布されたパンフレットには建設期間中、竹中工務店の当時の社長である竹中藤右衛門氏が2度、現地に足を運んだと書かれている。新幹線のない時代だったことを考えると、同社がこの団地建設をどれだけ大事に考えていたかがわかる。

コンクリートの骨材(コンクリートの体積の大部分を占める主要材料で砂利、砂などが使われる)には高品質で知られる地元の安倍川の砂利が使われた。今なら骨材を供給する事業者がいるが、この時には作業員に加え、市職員も駆り出されて手作業で砂利を運搬、ふるいにかけて作業していたという。

今のようにミキサー車のない時代で、現場で練られたコンクリートは粘度が高く、流し込むのに苦労した。結果、羽衣団地の壁と天井の間は不思議に斜め(ハンチ)になっている。

これは流し込む口を広く作り、そこから流しこんだためとか。コンクリートは竹の棒(!)で突き固めた。高品質な材料を使い、手間をかけて作られた建物だったため、今も十分使用に足るだけの強さを維持し続けているのである。

団地見学ツアーも盛況

その羽衣団地では25年から見学用の部屋を設置、一般の人向けに月に2回、定期的に団地見学ツアーを実施しており、団地内に用意された当時の生活を偲ばせる部屋で団地についての説明を受けた後、洗濯物干し場となっていた屋上、地下の共同風呂などの見学ができる。

見学用に用意された部屋の入口
見学用に用意された部屋の入り口。かつての暮らしを想像したイラストが掲げられている。扉は塗装を剥がした状態にもので、この状態が本来というわけではない(写真:筆者撮影)
室内の様子
台所を向き合う和室6畳。茶の間という設定(写真:筆者撮影)
室内の様子
使い込まれた木部。今と違い、本当の木材が使われており、古さが味になっている(写真:筆者撮影)
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