築80年弱でずっと現役!日本最古の団地が移住者向けの入居募集を開始。まだまだ使える団地のすごさを見てきた

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その姿勢を転換させたきっかけは2022年の長崎大学の学生からの問い合わせ。長崎市内にも羽衣団地と同じ48型の県営団地・魚の町団地が残っており、公営住宅としての用途は廃止されたものの、保存を考える活動が始まっていた。

【あわせて読む】長崎にある"ほぼ最古"のRC造「廃団地」再生の物語

そこで同年代の団地が現役で使われている静岡市では高経年の団地のこれからをどう考えているか、それを聞きたいという問い合わせだった。

48型団地の正面玄関
48型と49型では、わずか1年の違いでも差はある。それが扉の位置。こちらは48型で階段の正面に扉がある。ドアを開けると室内が見えてしまう(写真:筆者撮影)
49型団地のドア
その翌年の49型ではドアの位置が踊り場の両側に変更されており、これなら室内は見えない。この当時住みやすさを求めた試行錯誤が行われていたことがわかる(写真:筆者撮影)

これが契機となり、翌年には13大学から研究者が訪れた。他都市の状況や建物の建設経緯などを調べていくうちに関係者はそれまで特別なものと意識してこなかった羽衣団地やそれ以外の市内に残る昭和20年代の団地が社会的には非常に希少な、価値のあるものであることを認識するようになっていく。

建物自体の並外れた堅牢さも明らかに

25年1月に行われた建物の調査では建物自体の並外れた堅牢さも明らかになった。コンクリートは大気中の二酸化炭素の影響で表面から中性化が進み、それが内部の鉄筋を腐食させることでひび割れや剥落を引き起こし、劣化が進む。

ところが羽衣団地のコンクリートは表面にモルタルが塗られていたため、コンクリート内部はいたって健全。コンクリートの圧縮強度も十二分にあるという。

コンクリート
コンクリートにフェノールフタレインの溶液を噴霧、中性化を測定した。中性化していないアルカリ性の部分は赤紫色に変色し、中性化した部分は無色のまま。劣化が進んでいないことがわかった(写真:筆者撮影)

この要因としては建てられたのがRC住宅黎明期で施工、材料ともに良かったからではないかと推察される。

次ページ見学会で当時の生活が垣間見られる
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