築80年弱でずっと現役!日本最古の団地が移住者向けの入居募集を開始。まだまだ使える団地のすごさを見てきた

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それ以外にも食器棚など標準仕様と異なる点がいくつかあり、静岡市の担当者が細かく考えて作ったことがよくわかる。

台所
台所。左の木の棚の中に配膳口がある。標準仕様は引き出し4カ所だが、静岡市では2カ所になっている(写真:筆者撮影)
台所のシンク
台所のシンク。タイル張りで今見ると新鮮でかわいい(写真:筆者撮影)

入居が始まったのは49年3月から。当時としては珍しい水洗便所、ガスのある住まいということで人気を集め、市内外からの見学者も相次いだ。

部屋の中
和室6畳からもう一部屋の和室8畳を見たところ。左側の壁には配膳口がある。台所で作った料理をここから受け渡ししていた(写真:筆者撮影)
室内の様子
電灯にスイッチはなく、電灯本体でオン、オフを切り替えた。コンセントは住戸内に2カ所のみ。キッチンと部屋に1カ所だけだったという(写真:筆者撮影)

間取りは6畳、8畳の和室に台所という2Kで専有面積は39.06㎡。家賃は1200円でその当時の大卒初任給は6500円。カレーライスが1皿50円、米が1升(1.5キロ)で150円ぐらいという時代だった。

長崎からの問い合わせがきっかけに

それから70余年。前述した風呂の設置に加え、92年にバルコニーが増築されて外観は変わったが、それ以外竣工時とそれほど変わらない状態でこの団地が残ってきたのはある意味、僥倖(ぎょうこう)だった。

「国は公営住宅の法定耐用年数を鉄筋コンクリート造で70年としています。静岡市でも築70年以上を経過した羽衣団地については今後の建て替えを見据え、この10年ほどは新たな募集はしてきませんでした。

ただ、商店街にも近いなど生活の利便性がいいため、現在でも約6割以上の入居者がいます。この年代の建物は作りがシンプルなので故障などで苦情が発生することも少なく、あまり手間がかからず維持管理してきました」

そう語るのは、市営住宅の管理に当たっている静岡市まちづくり公社の牛田智之さん。建物の立地の良さや大きな不具合などもなかった結果、70年以上使われ続けてきたわけである。

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