右側に進む船では、サビだらけになった廃船や、貨物用のクレーンなどが印象的だった。表情までは見られなかったが、バイクに乗って移動する北朝鮮人も目撃した。左側に進む船では高層マンションや、銃を持った軍人(おそらく国境沿いの見張り)を何人も目撃した。北朝鮮海軍の哨戒艇らしき船や、その近くで川を泳いでいる人もいた。
不思議な感じだった。もしもこの船から落ちてしまった場合、1分も泳げばそこはもう北朝鮮だ。今自分が吸っている空気や感じている気温は同じはずなのに、そこに住む人たちの生活や常識は、きっと自分の知っている世界とはまったく異なっているのだろう。
乗客の中国人女性が北朝鮮人に向けて、大きく手を振っていたが反応はなかった。北朝鮮側の樹木の上のほうに鳥の巣があった。鳥からすると人間の国境は関係ないわけで、鳥は人間に対してどのように思っているのか少し気になった。
23階のホテルの部屋から見えた北朝鮮の意外な景色
この日は1泊1万2000円の4つ星ホテルに宿泊。中国ではかなり高額な部類に入るホテルだ。30階建てで、最上階にはサウナ付きの大浴場が付いており、私の部屋は北朝鮮ビューの23階。受付で日本のパスポートを見せた後、女性スタッフから「スイートルームにアップグレードさせていただきました」と笑顔で伝えられた。
部屋に入った瞬間、私は「すげぇ! これが上から見た北朝鮮なのか!」と叫んでしまった。国境の川沿いにビルが建っているのはすでに見てきたが、その先にもたくさんのビルが連なっている。とはいえ全体的には田舎な風景で、後方には茶色い山々や、裸の土地が確認できる。ニョキニョキと生えている煙突は、ネットで調べたところ、どうやら日本統治時代の王子製紙(現・王子ホールディングス)の遺構のようだ。


















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