「地方に嫁いだ娘に"遠距離介護"はさせたくない…」 《70代で2拠点生活》→《82歳で地方移住》 一級建築士が選択した"ベストな住処"

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現在、吉田さん夫妻は南阿蘇と熊本市内で、それぞれ週の半分ずつ過ごしている。移動は夫が運転する車だ。高齢の父の運転を心配する娘が、「南阿蘇と熊本市内の往復限定」で許可してくれたとか。

こうして始まったばかりの終の住処の2拠点生活だが、吉田さん夫妻はその先についても考える。つい最近、夫の兄が亡くなり、自分たちの死もそんなに遠くはないことが実感としてわかった。

マンション
現在住んでいる熊本市内のマンションのリビングダイニング。北側の窓からは川沿いの道が見える。自分の気持ちが高まる景色が見えることも大切な要素だ(写真:吉田紗栄子さん提供)

「娘に介護させない暮らし」を選択したい

吉田さんと親しい元「シニアライフ情報センター」代表の池田敏史子さんの話が身に染みるという。

「高齢期の住まい方には、3つの選択肢があるとおっしゃっていました。1つめは、自宅に住み続けて、自宅で死ぬこと。2つめは、できるだけ長く自宅に住んで、いよいよとなったら施設に入る。3つめが、体が元気で、新しいコミュニティを楽しめる時期に、ずっと住み続けられる施設などに住み替える。65歳頃の早めの時期が理想ですね。わが家は2つめだねって、主人と話をしたばかりです」

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やがて運転免許を返上するときもくるだろう。お互いの健康状態によって2拠点生活は解消することになるかもしれない。

吉田さんにとって楽なのは、やはり都市部にある熊本市内のマンションだが、施設に入るなら、娘が会いに来やすい南阿蘇だろうなあとつぶやく。

関東から移住したきっかけは、ひとり娘に遠距離介護をさせないためだった。だがそれは、娘のそばに住んで世話になる、ということではない。「娘に介護してもらうことはまったく考えていません」と吉田さんはきっぱり。

「仕事柄、介護がどれくらい大変なのか間近で見ているので、それだけは娘にさせたくないです。ただそばに住んで、たまに会えたらそれでいい。飛行機の距離で離れていたら、それも叶いませんから。終の住処の最終決定は、私たち夫婦ですること。まだちょっとそこは神様の言うとおりにって感じで、幅を持たせています(笑)」

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桜井 美貴子 ライター・編集者

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さくらい みきこ / Mikiko Sakurai

1965年生まれ。秋田県出身。出版社勤務の後、フリーランスの編集・ライターとして独立。医療、カネ、性などさまざまなテーマで取材、執筆を続けている。生活実用をはじめとした書籍の企画編集、人物インタビューなど、硬軟の現場を渡り歩く。

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