「地方に嫁いだ娘に"遠距離介護"はさせたくない…」 《70代で2拠点生活》→《82歳で地方移住》 一級建築士が選択した"ベストな住処"

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「横浜を選んだのは、羽田空港までリムジンバスが出ているので南阿蘇に通いやすいし、街のバリアフリー化も進んでいて、公共交通機関も整っているから。私は40代に変形性膝関節症を患い、歩くときは杖が必要なのですが、横浜のマンションは駅まで徒歩圏なのでどこでも1人で出かけられました。都会の利便性は自立した老後を送るための備えになるんですね」

都会で暮らす恩恵を受けていた吉田さんは、定期的に南阿蘇の自宅に滞在するたびに、夫や娘の車がなければ1人でどこにも行けない現実を痛感したという。

しかし、「両親には揃って1カ所に住んでほしい」という娘の要望。南阿蘇で暮らし続けたい夫。50代の娘と80代の夫と妻、3者の人生設計がすれ違う。

自宅
70代で購入した、熊本県南阿蘇の築古一軒家をリノベーション。写真のリビングはお気に入りの空間だ(写真:吉田紗栄子さん提供)

「たった3日」で住処を決められた理由

着地点を見出したのは娘だった。

「車がなくても生活できる熊本市内に住んでみたら?」と提案されて、吉田さんはそれに乗った。

すると娘はその日のうちに、熊本市の中心地に建つ築50年2LDKの分譲マンションの一室を見つけてきた。すぐ内見に行き、吉田さんはプロの目で要所をチェック。OKを出すと、娘夫婦が購入してくれたという。

物件を見つけて、内見、仮契約までトータル3日。構想22年の移住計画は3日で決着がついた。吉田さんの新しい「80代ライフ」がスタートした。

即決できた決め手は何だったのだろうか。吉田さんは「高齢期の暮らすマンションの大事な要素は、『建物の外と中の環境』」だという。

「外」は地域の環境で、公共交通機関までの距離が近く、病院や公的な機関、日常の買い物をするスーパーなどが徒歩圏にあること。

「中」はマンションに入ってから自室の玄関までの環境で、段差がなくエレベーターホールまで行けるか。集合ポストやゴミ捨て場まではどのくらいか。

吉田さんが初めて住む土地の築50年のマンションを内見1〜2時間で即決できたのは、外と中の環境がクリアできたからだという。さらに決め手になったのは入居者の方々の顔が見えたことだった。

バリアフリー
段差の多い築古マンションも、工夫次第でバリアフリーにすることが可能だ。写真は横浜時代のマンション(写真:吉田紗栄子さん提供)
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