「『医療同意拒否』された子が生きられる道を」難病・障がいを負う2児を養子縁組で育てる「休みゼロで赤字」の元牧師が明かす、日本の"悲しき現実"

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「そこで、とっさに出た言葉が『じゃあ、僕がもらいます』だったんです。冗談じゃなく本気で。産むか中絶かの2択しかないなら、産んでから託せる道を作ればいいじゃないかと。そこで、その助産師の同僚である産婦人科医に会いに行き『先生、どうか赤ちゃんの命を奪わないで。第3の“託す”という道を僕が拓きますから、助けてください』とお願いしました。

さらに、最後には『日本のマザー・テレサになってください』って付け加えたんです。当然、断られると思いました。でも、『協力しましょう』って言っていただけたのです」

厚労省の統計によると、人工妊娠中絶件数はピーク時の約117万件(1955年)からは大幅に減少しているが、2023年度でも12万6734件で、実施率は女子人口1000人あたり5.3%とされている。しかし、協力的な産婦人科が生まれてからは、望まない妊娠や障がいがわかった胎児の相談窓口ができた。それが『小さな命の帰る家』の設立につながっていく。

そして現在、『小さな命の帰る家』は、障がい児/医療ケア児の相談、養育/望まない妊娠をして困っている方/子どもの緊急レスパイト(介護者が一時的に育児などから離れて休めるようにする支援サービス)/特別・普通 養子縁組などの窓口となっている。養親も募集しており、必要なサポートや情報提供もできるよう準備を進めている。

恵満ちゃん。やまとくん以上に病状は重いが、懸命に生きている(写真:松原さん提供)

2人の子どもを“ほぼ全介助”の日々

「特に重い障がいを抱えた子は自分で引き取る」と決めていた松原さんは、やまとくんと恵満ちゃんを受け入れた。では、実際に「医療同意拒否」された子どもを育てる生活とは、どのようなものなのか。松原さんは、2人との日常を淡々と、しかし具体的に語る。

「まず、やまとは現在6歳ですが、発達検査では1歳1カ月ぐらい。言葉は出ませんし、意思疎通もできません。だから、こっちが察してあげないといけない。僕らの行動を見て、何をしてほしいかを感じ取ってあげないと、ストレスが溜まってしまうんです」

排泄やスムーズな歩行も、自力ではできない。

「今日もそうですけれど、やまとはおしっこも、うんちも出ません。だからこちらが肛門を刺激して出してあげる。1日2回、これを毎日です。ダウン症で心臓疾患があって、発達障がいもあります。上あごの形が健常の人と違うので、咀嚼も難しい。小さなものはつまめないし、歩くのも坂道は今でも無理ですね」

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