「『医療同意拒否』された子が生きられる道を」難病・障がいを負う2児を養子縁組で育てる「休みゼロで赤字」の元牧師が明かす、日本の"悲しき現実"

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親がサインしなければ、治療ができない。松原さんは、やまとくんも恵満ちゃんも「私が育てますから、ご心配せずにサインしてください」と親御さんに直談判したそうだ。

やまとくんは、ダウン症候群と重い心臓疾患。恵満ちゃんは、ウエスト症候群という難病に加えて、染色体の7番、18番に異常がある。気管切開をして人工呼吸器を使用しており口からモノが食べられないので、直接胃に栄養を流し込む胃ろうを造設している。

明らかに支援が必要な子を見捨てるなんて……と思うかもしれないが、ただでさえ、子育てというのは大変である。それが重度の障がいを負っているとなると、なおさらだ。「この子が生きていて幸せだと感じられるのか」という想いに悩まされる親もいるだろう。中には、何らかの事情を抱えているとか、好きでサインをしないわけではない場合もある。

ゆえに、松原さんはこうも語った。「親を一方的に責めることはできない。責めたところで、何も解決しない。ですから、私のほうでできることはやっていこうと思ったのです」。

「マヨネーズとダンボール」──原点になった事件

松原さんが現在の活動を始めたきっかけは、約5年前に報じられた事件だった。大阪で、とあるシングルマザーが3歳と1歳の子どもを家に残して当時の恋人のもとへ外出。帰宅したときには2人とも亡くなっていた。報道で明らかになったのは、その子どもたちの胃の内容物を調べたところ、「マヨネーズと段ボール」だったということ。

「3歳と1歳の子が、誰の助けもなく、マヨネーズとダンボールを食べて飢えをしのごうとするも、亡くなってしまった。そのとき、2人ともどんな気持ちだったんだろうって」──松原さんは、衝撃よりも、強い自己嫌悪を覚えたという。「腹が立ったんです、自分に。『お前は何もしていないじゃないか。口ではそれっぽいことを言うけれど、行動してないじゃないか』って」

ちょうどその頃、助産師と会話する機会があった。「1年間に中絶で亡くなっている子どもの数を知っていますか」と聞かれ、松原さんは「20万人前後」と答えたそう。それは当時の数字に近かったというが、助産師は続けて「こういう子どもたちをどう思いますか」と問うた。

やまとくんの誕生祝いには松原さんの娘さんも駆けつけてくれた(写真:松原さん提供)
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