「AIが人間の仕事を奪う」は本当か?これからも必要とされる人が当たり前にやっていること

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実際に顧客がどこでつまずくのか、どんな表現に反応するのか、現場で誰が何を考えているのか。こういった情報は、現場に身を置いて体験しないとわかりません。
それこそが、「一次情報」として自分にしかない経験知となり、決断を後押しする情報になり、精度の高いレビューができる源になります。
(88ページより)

だからこそ、AI時代にこそ「泥臭く動く力」が求められるのだ。それが、人間ならではの武器として際立ってくるからである。

納得できなくても、まず一度やってみる

ただし、一点だけ“陥りがちなポイント”があると著者は述べている。それは、「納得できれば、泥臭い仕事もやります」というスタンスの危うさだ。

経験の浅いうちは、納得できることなんてそう多くありません。
たとえば「とにかくテレアポをする」「リアルな店舗でイベントをする」といった取り組みです。
新卒で仕事を始めたばかりのとき、これは意味のある仕事だ! などと、判断できるでしょうか?
(90ページより)

著者も前述したテレアポの件について、当時は価値のある仕事かどうかなどわからなかったと振り返っている。似たような経験をしたことのある方もいらっしゃるだろうが、それは当然のことだろう。

ただ、売上を立てないとまずいということしか教えられていないので、その手法としてテレアポくらいしか選択肢がなかった、というだけです。
それでも、やってみたからこそ後年になって意味が理解できたのです。
(88ページより)

なるほど、仮に「テレアポみたいに非効率なこと、自分はやりません」などと反論したとしたら、そうした学びを得ることはできない。「やってみた」ことに意味があるのだ。

ちなみに著者には昔、人から言われた言葉があるのだそうだ。とても説得力のあるものなので、ここでも引用しておこう。

「バットはこうもって振れ、って言われたらバットを振るんですよ。なんで右手が上なのかとか、なぜ脇を締めるのかとか、やる前に考えても意味ないでしょう? 仕事も同じ。言われたやり方でバットを振ってから理解するんです」
(89ページより)

これは仕事以外のことにもあてはまることであり、イノベーションの礎でもある。ともあれこうした原理原則は、まずやってみた人間にしか理解できないことだ。

意味があるかどうかわからないことでも、納得できなかったとしても、まずは一度やってみる。そうして、自分だけの一次情報をつかむことにこそ意味があるのである。

仮に、やってみた結果「意味がないことがわかった」としても、それがわかったことは無駄ではない。二度とその選択肢を取らないという決断ができるからで、つまりはそこにも意味はあるのだ。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー・ジャパン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」「文春オンライン」などで連載を持つほか、「Pen」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)、『先延ばしをなくす朝の習慣』(秀和システム)など著作多数。最新刊は『抗う練習』(フォレスト出版)。

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