植田日銀、追加利上げの余地はなお大きいとも示唆/利上げ再開後の行程はまだまだ長く、鍵を握るのは植田氏による次の一手とそのタイミング
同月時点で、物価目標が達成されるかどうかを「予断を持たずに判断していくことが重要」だとしていた日銀だが、12月19日に姿勢を転換。今回の金融政策決定会合では「賃金と物価がともに緩やかに上昇していくメカニズムが維持される可能性が高い」との認識が示され、トランプ政権発足前に示していた利上げ方向へのスタンスに回帰した。
日銀が再び政策金利を小幅に引き上げることができたのは、植田氏の戦略を雄弁に物語っている。今の金融政策サイクルは、漸進主義と実務重視が特徴だ。
植田氏は前総裁の黒田東彦氏の特徴だったサプライズ演出を好まない。市場を驚かせてメッセージを強調することに価値は乏しいとみているためだ。
インフレ率はゼロを上回って安定しており、急上昇はしていない。経済成長も力強さを欠く中で、市場を揺さぶる必要がないためだ。植田氏は慎重な運営を好み、これまでの利上げは全て、時に詳細に至るまで事前にメディアに漏れていた。
円相場
「中立金利」見通しで苦慮しているのは日銀だけではない。どの程度のペースで利下げすべきかを巡って議論が続く米連邦準備制度理事会(FRB)でも主要なテーマだ。
こうした模索は当面終わりそうにないし、永遠に続くのかもしれない。しかし、植田氏にとっては未解明のままの方が都合がいい。
もし中立金利が上方にシフトしていると示唆すれば、今後も複数回の利上げが視野に入ることになるからだ。選択肢が制約される展開は避けたいだろう。半年ごとに0.25ポイントずつ、2027年初めまで利上げするというシナリオも考えられる。
高市早苗首相がどこまで同調するかも焦点だ。日本政府は円安の深刻化を避けるため、今月か来月に1回だけの利上げを容認していたとの見方もあった。高市氏はこれまで利上げに否定的だったが、円の下支えやインフレ抑制につながるのであれば歓迎するだろう。


















