政治家を目指す生徒に人気なのが「政治家になる!」。アメリカでは「政治=改革」というイメージが強く、国や地方が抱える問題を根っこから変えるには、政治家になるのが早いと考える人が多いそうだ。ほかにも「選挙事務所とキャンペーンの運営法」という出馬にテーマを絞った授業、「ロビー活動:理論・実践・シミュレーション」という自らの望む政策を実現するための戦略を学ぶ授業もある。
より現場に近い体験型がよければ、「中東への現場視察:北アフリカにおける移民の影響」もある。モロッコに赴き、欧州に渡る移民の現状を調べ、解決策を探るという内容だ。「ビジネスプランワークショップ:起業家精神とイノベーション」では、講師であるマッキンゼーの元パートナーからコンサルティングを受けながら、4カ月かけてビジネスプランを練りあげる。
ほかにも、いわゆる学問系の経済学、政治学、国際関係論から、スキル系の交渉術、リーダーシップ、行動科学、意思決定まで幅広い。
だから、机上の空論にはならない
教授陣の個性的な経歴も、ハーバードの授業を特徴あるものにしている。
外交分野で最も人気のある授業「超大国の争い」のニコラス・バーンズは、米国の外交官としてトップまで上りつめた人物だ。経済分野で人気の「なぜ貧しくて不安定な国が多いのか?」を教えるリカード・ハウスマンは、有名な経済学者でありながら、ベネズエラの大臣を務めた。人気授業のひとつ「組織を立ち上げる:仲間、力、変革」のマーシャル・ガンツは、市民活動家として50年以上の経歴を持つ。1960年代には公民権運動、最近ではオバマ大統領の選挙にも参謀として携わった。
社会人になって大学に戻ると、ちょっとうがった見方で授業を受けてしまう。「先生、そうやって理論を教えますが、現実は違いますよ。たとえば私の経験では……」となる。実際に授業でも、実務に詳しい生徒が教授に議論を吹っかけることもしばしば。先生も現場を知らないと対応は難しい。
だが実務家としての経験があれば、理論では説明できない現場での対立、どろどろした交渉の裏側を授業でも取り上げられる。実務につなげようとする工夫が、授業でも随所にみられる。
たとえば私が受けている「貿易の政治経済学」。経済学の授業でありながら、実際の貿易交渉も体験する。