ラピダス"2.9兆円投資"は日本経済を救わない! 高市内閣の成長戦略が見落としている「致命的な欠陥」

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ラピダス工場
北海道千歳市に建設されたラピダスの最先端半導体工場(写真:時事)
高市早苗内閣は先端分野への投資を強化することで日本経済の成長を促す戦略を描く。だが、日本経済が直面している供給制約の本質は、そこではない。成長を阻む本質的要因を取り除くにはどのような政策が必要か、提言したい――。野口悠紀雄氏による連載第162回。

ラピダス支援に象徴される投資偏重型の産業政策

高市内閣が掲げる成長戦略は、17の重点分野を定め、政府支援を通じて民間投資を誘発することとしている。具体的には、AI(人工知能)・半導体、量子、バイオ、航空・宇宙、防衛、GX(グリーントランスフォーメーション)、港湾ロジスティクスなど、国家戦略上の重要分野を幅広く対象としている。

従来の「新しい資本主義実現本部」を廃して「日本成長戦略本部」を司令塔に据えたことは、産業政策へ大きく舵を切ったことを象徴する。政府はこれら分野での投資を促進するため、減税や補助金、政府保証など多様な支援策を動員するとしている。

また、スタートアップ支援、金融を通じた潜在力向上、労働移動、労働市場改革、賃上げ環境、大学改革、人材育成、国際競争力強化、女性の働き方改革、サイバーセキュリティーといった、分野横断的な課題も挙げた。

しかし、日本経済が直面する供給制約の本質は、これら先端分野の投資不足にあるのではない。より深刻で、広範かつ構造的な「人材不足」だ。OECD(経済協力開発機構)、内閣府、経済産業省などの統計を参照しても、日本の供給力低迷は「労働投入の減少」と「人材育成力の脆弱化」に根差していることが明らかだ。高市内閣の成長戦略は、その核心部分に十分に対応していない。

政府の産業政策の典型は、最先端半導体の量産を目指すラピダスの支援だろう。

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