ラピダスは、2027年度に2ナノ、将来は1.4ナノ半導体の量産を目指し、北海道千歳市で工場建設を急いでいる。経産省は技術開発補助金に加え、資本注入や政府保証を通じて、累計2.9兆円の公的支援を決定した。最終的な総投資額は7兆円を超える見通しだ。
しかし、これほどの巨額支援にもかかわらず、民間企業の出資は限定的だ。ソフトバンク、トヨタ自動車、デンソー、NTT、ソニーグループ、NEC、キオクシアの各社が10億円、三菱UFJ銀行が3億円を拠出したにすぎず、合計73億円にとどまる。
今後は、ホンダやキヤノンなどが加わる予定だが、それでも公的支援額との差は圧倒的だ。民間企業が採算性や技術的成功可能性に慎重な姿勢を崩していないことを物語っている。
技術的ハードルも高い。国際機関の調査によれば、27年に2ナノ量産を達成しているのは台湾のTSMCと韓国のサムスン電子が中心で、これら企業は年間数兆円規模の研究開発投資を継続している。
後発の日本が追いつくには、相当な負担が必要だ。12年に経営破綻したエルピーダメモリ(現マイクロンメモリジャパン)や経営再建中のジャパンディスプレイなど、経産省が主導してきた過去の大型支援の失敗を想起する声も多い。
もちろん、先端技術投資は不可欠だ。しかし、それだけでは日本経済全体の供給制約を解消することはできない。国家的課題は、より基礎的で広範な「人材」にある。
日本経済の供給制約の“本質”とは何か
内閣府の資料によれば、25年7〜9月の日本の潜在成長率(前期比年率)は0.5%だ。要因別の寄与率を見ると、全要素生産性が0.5%、資本投入量が0.1%、労働時間が▲0.3%、就業者数が0.2%となっている。
このように、潜在成長率を引き下げる主な要因は労働生産性の伸び悩みにある。これは1980年代後半から継続している現象だ。



















無料会員登録はこちら
ログインはこちら