ラピダス"2.9兆円投資"は日本経済を救わない! 高市内閣の成長戦略が見落としている「致命的な欠陥」

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そして、潜在成長率を牽引しているのは全要素生産性である。これは、資本や労働の増加では説明できない成長要因を表している。

また、OECDがまとめた「図表でみる教育2025」によれば、日本の高等教育への公的支出(対GDP<国内総生産>比)は1.4%にすぎない。これはOECD平均である1.5%よりも低い。諸外国との比較では、韓国(1.5%)より低く、アメリカ(2.3%)やイギリス(2.1%)と比べるとかなり低い水準だ。

12月6日の本欄(「博士課程=人生終了」という残酷な現実、日本の“科学立国”を揺るがす《文部科学行政》の致命的欠陥)で述べたように、人口当たりの博士号取得者数は主要国と比べると低迷しており、しかも博士過程進学者が急減している。

このように、高度人材育成基盤の脆弱さが浮き彫りになっている。国立大学の運営費交付金は04年以降漸減しており、高度人材育成を担う大学院教育の縮小も深刻だ。

デジタル分野でも問題は根深い。経産省の調査では、30年に最大で約79万人のIT人材不足が生じると予測されている。地方自治体ではDX(デジタルトランスフォーメーション)を担う専門人材が確保できず、システム更新や行政データ整備が滞る例が多い。これらの課題は、個別企業の投資不足ではなく、国全体の人材育成・教育投資の不足に起因している。

エッセンシャルワーカー分野の深刻な実態

供給制約が最も深刻化しているのは、高市政権が重点投資の対象とする先端産業ではなく、「エッセンシャルワーカー」(社会・経済の機能を維持するために必要不可欠な業務を行う労働者)の分野である。

介護はその典型だ。東京商工リサーチによれば、25年の訪問介護事業者の倒産件数は11月末までに85件に達し、2023年から3年連続で最多を更新した。自治体によっては、訪問介護事業所が1つも存在しない「空白地帯」が100町村に達するとされ、地域住民の生活に直結する危機となっている。

厚生労働省によれば、訪問介護の有効求人倍率は14倍超(23年度)と突出して高い。ヘルパーの高齢化も進み、離職者数は新規参入者数を上回る。

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