「おかしな男がヨットで立ち往生」 海に出ては溺れるアインシュタイン…地元住民に救助され続けた《天才物理学者》の"しくじり秘話"
実際、最愛のセーリングが最悪に下手くそなアインシュタインが引き起こす災難は、アメリカ東海岸一帯で知られていた。4年前には家に帰ろうとして潮目を読みまちがえ、なぜか出発地点から遠く離れたコネチカット州で座礁して全国紙で報じられた。ロードアイランド州でもヨットが転覆したり濃霧で立ち往生したりして、何度も地元住民に救助された。そしてそのたびギリシャ悲劇の英雄にでもなったつもりか、アインシュタインはふたたびヨットに乗りこみ海に出て、沿岸の心優しい人々に世界一の賢人の溺死を阻止する役目を押しつけるのだった。
「ダメな船乗り」として認知されていた天才物理学者
さてそこまで心優しくない読者のみなさんは、なぜみんな、アインシュタインをそんなに何度も助けたのかと不思議に思っているかもしれない。天才物理学者の巻き毛もじゃもじゃ頭が波間でぴょこぴょこ浮いているのを繰り返し目撃すれば、「ひょっとしてわざとやってない?」と疑いたくなってもおかしくない。
だが海の男アインシュタインには切り札があった。なんと泳げなかったのだ。あれだけ何度も海に投げ出されてなお泳ぎを覚えなかったのだから、ある意味、すごい。
ラッキーなことにアインシュタインはカチョーグの人々と友好関係を築いており、彼らも「アインシュタインを殺した町」になりたくはなかった。地元住人にとってアインシュタインはロスマンの父親と百貨店で一緒に楽器を演奏する男、マーサ・ポールの家を訪ねては裏庭で岩に座って海を眺める男だった。
「私たちにとってアインシュタインは、おかしな髪型をしておかしななまりでしゃべるダメな船乗りでした」と、当時少女だったマーサ・ポールはニューヨーク・タイムズ紙で語った。「村の人々は海を眺めては、おかしな男がヨットで立ち往生しているのを見て笑っていました」
とはいえカチョーグ――およびコネチカット州、ロードアイランド州その他アインシュタインがうれしそうに転覆を繰り返したすべての地域――の人たちも、彼の友人に話を聞いていたらここまで寛容にはなれなかったかもしれない。


















