不動産協会はマンション引き渡し前の転売禁止の方針をまとめたが、加盟社への強制力はない。仮に守られたとしても、引き渡し後の転売はできる内容であり、5年間の転売禁止と比較しても実効性は限定的だ。
また、一部の不動産仲介会社では、富裕層の顧客に新築マンションの抽選申し込みをさせ、取得後に高値での売却を前提とするスキームが問題視されてきた。仲介会社にとっては、売主・買主の双方から仲介手数料を得る「両手仲介」が成立するため、2億円の物件であれば、片側3%強の手数料が2件分となり、約1200万円規模の収入になる計算だ。
そもそも事業者側から見れば、販売に転売制限を設けるよう行政に正面から要請されても、それを受け入れる動機は乏しい。とはいえ、実際に住む人に販売するという目的をなぜ掲げられないのだろう? これこそが、短期的な事業収支を優先し、住宅市場の健全性よりも目先の利益を追求する、不動産業界の構造的な問題を象徴している。
転売規制がなかった晴海フラッグ
過去には、規制をかけたマンションの例がある。シティタワー品川という東京都の定期借地権物件は、販売価格を東京都との取り決めとし、5年間の転売禁止・賃貸禁止で自己居住専用としたケースがある。実際、5年以内に取引された住戸は競売物件だったため、ほぼ守られている。
この先例がある以上、本来であれば、東京オリンピックの選手宿舎だった晴海フラッグでも、同様の転売抑止策を検討する余地はあったと言える。用地価格を市場価格のおおむね10分の1の水準で払い下げている以上、転売によって大きな利益が生じることは、当初からある程度想定し得たはずだ。



















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