2位と1億円以上の差…「藤井聡太氏の凄み」プロ棋士のシビアな懐事情 「対局料の2割は20年後に払う!?」 かつての将棋界に実在したシステム

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
将棋の対局のイメージ
プロ棋士の給料はどれくらい? 元プロ棋士が将棋の世界の裏事情を明かします(写真:Fast&Slow/PIXTA)
令和6(2024)年6月の竜王戦、対泉正樹八段戦を最後に、50年の現役生活を終え、引退した青野照市氏。将棋界の最高峰のリーグである順位戦A級を通算11期務めた一流の棋士ですが、中学卒業後すぐに将棋会館に住み込んで「塾生」として将棋界に入り、長じては日本将棋連盟の理事を何度も務めた、将棋界の内側を最もよく知る人物の一人でもあります。
将棋界ついて青野氏は、「どんな世界にも明と暗があり、外部の方は知らないことだらけの裏事情もある。そして将棋界には、奇人・変人というべき棋士が多かった」と明かします。
同氏の新著『職業としての将棋棋士』より一部抜粋し再構成のうえ、棋士の給料事情についてお届けします。

棋士は割の良い職業か

棋士という職業は、果たして割の良い職業か、また子どもたちが憧れる世界か、親が子どもにさせたい職業かについて、過去の経験も踏まえて振り返って考えてみたい。

棋士の収入というのは、時代ごとに大きく変わってきたような気がする。「将棋の棋士はどこからお金が入るのですか」というのはよく聞かれた質問だった。棋士の収入は棋戦の対局料、賞金が主で、どこから入るかといえば、棋戦を主催するスポンサーからである。

その主催を戦前から長らく新聞社が引き受けてきた。主催社と日本将棋連盟が契約をして、将棋連盟から支払われるということだ。戦後間もない頃は、新聞の拡販にとって、囲碁・将棋欄は欠かせないコンテンツだった。また新聞社は、日本文化の伝承を担うという意味もあって、長くスポンサーを続けてきてくれた。このスポンサーが一般企業だったら、ずっとは続かなかったはずである。

もっとも20年ほど前からは、新聞社の人に「もうわれわれが支える時代ではないでしょう」と言われ続けている。

昔(昭和20年代)から名人戦が一番格上の棋戦で、名人戦の主催を巡って、毎日新聞社と朝日新聞社とで、何度も争いを繰り広げてきた(現在は竜王戦と名人戦の2つが一番格上)。名人戦が昭和20年代に毎日から朝日に移ったことで、毎日は昭和25(1950)年に王将戦を始めたのだった。

次ページ「1局の対局料で地元(横浜)のキャバレーが2軒回れた」
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事