【戦艦「大和」復元への道】『ゴジラ』の街並みを作った会社も協力、2000枚もの写真を使って…「十分の一戦艦大和」建造で味わった"生みの苦しみ"

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通路にしても、ラッタル(はしご)で登れるようになっている場合には問題ないが、艦内から行くものは、必ず艦内図面で通路を確認する。この確認作業は省けない。なぜなら、機銃座などの床には兵員が通るマンホールのハッチをつけなければならず、ハッチの場所は艦内通路とつながっていなければならないからだ。通路に多数ある防水扉も、通路との関係を考える必要があって、一概に右開き、左開きとは決められない。

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田島氏は大和や武蔵の写真を拡大し、無数にあるリベットのピッチを測った。大和は建造当時、最新鋭の戦艦だったが、強度を重視したためリベットを多用している。リベットは、使用される箇所と寸法によって、微妙にピッチが違う。また、高角砲のシールドなどには、リベットの列に六角のボルトが混じっていたりする。これらも写真から読める限りは再現を目指した。

6月に入り、ようやく艦橋基部が完成した。検査のため呉に運ばれてきた下塗り塗装だけの艦橋は、さっぱりしていたが、その形態の鋭さには目を見張った。鋭さとは、迷いのないシャープさである。大和の艦橋には、奇妙なほど曲面が多い。その再現は一見簡単なように見えても、少しでもカーブを摑み損なうと、何ともおかしな形になってしまうのだ。

「誤差はないです」工作精度の高さに驚き!

ここで小さな搭載部品のサンプルを見て驚いた。樹脂加工された合成ボール紙のような素材で組まれた四角い箱にはホゾが切ってあったが、表面に四角の線が見えるだけ。遊びゼロで組み合わされていたのである。左甚五郎(ひだりじんごろう。江戸時代の建築彫刻の名人)なみの精度だ。

「これ、どうやって作るんですか」

田島氏は事もなげに、

「コンピュータから直接レーザーカッターで切り出すので、誤差はないですよ」

と教えてくれた。この機械は、紙や木ばかりでなく、厚さ3ミリもある鋼材すら自由に切断できるという。まったく世の中の恐ろしいぐらいの進歩に驚いた。これを見て、図面さえしっかりしていれば、工作精度に関してはまったく心配ないと思った。

ともあれ、十分の一大和建造はこれで、軌道に乗った。

あわせて読む(1月5日公開)
【超巨大戦艦「大和」の復元に懸けた男たち】沈没したときの姿はどうだった? 海底映した60時間の映像と2000枚の画像を解析して見えてきたもの

戸髙 一成 呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)館長/日本海軍史研究者

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とだか・かずしげ / Kazushige Todaka

1948年生まれ、宮崎県出身。多摩美術大学美術学部卒業。(財)史料調査会主任司書として、 海軍反省会にも関わり、特に海軍の将校・下士官兵の証言を数多く聞いてきた。 92年に理事就任。 99年、厚生省(現厚生労働省)所管「昭和館」図書情報部長就任。2005年より現職。19年、『[証言録]海軍反省会』(PHP研究所)全11巻の業績により第67回菊池寛賞を受賞。
著書に『日本海軍戦史 海戦からみた日露、日清、太平洋戦争』(角川新書)、『帝国軍人 公文書、私文書、オーラルヒストリーからみる』(大木毅氏との共著、角川新書)、『日本海軍 失敗の本質』(PHP新書)などがある。

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