スマホ依存で学力低下の本質は? "利用時間が長い"ことばかり気にする人が陥る盲点とは
データもその傾向を裏づけています。総務省の出している情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査によると、2017年から2023年にかけて、日本人のネット利用時間は大きく増加しています。2017年には平日約100分・休日約123分だったのが、2023年には平日約194分、休日約202分と、大幅に増加傾向にあり、平日は約2倍に増えていることがわかります。
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この時期と、ホームボタンが消え、縦型動画プラットフォームが急速に普及した時期は重なります。つまり、「戻る」「やめる」という行為が物理的に難しくなった結果、長時間の利用が促進される構造が生まれた可能性があります。
技術の変化は、私たちの行動そのものを変えていきます。以前のスマホ利用は、アプリを起動し、情報を検索し、ボタンを押して区切るという、いくつもの“小さな意思決定”の積み重ねでした。
しかし現在は、スワイプするだけで動画が自動再生され、SNSを開けば際限なくタイムラインが流れ続けます。次のコンテンツはAIが勝手に用意してくれるため、自分で選んでいる感覚が薄れていきます。
“選ばない・区切らない”が「思考習慣」を弱らせている
この“選ばない”“区切らない”という体験が、子どもたちの「思考習慣」を弱らせているのではないか──私はそう感じています。
たとえば、YouTubeショートやTikTokの動画を「目的を持って見ている」という生徒はほとんどいません。「なんとなく開いたら、次々と動画が流れてきて気づけば1時間経っていた」という体験が日常化しています。InstagramやXでも同じで、何かを調べようとして開くのではなく、ただタイムラインを眺める目的のない利用が圧倒的です。
さらに今の子どもたちには、もう一つ大きな変化が起きています。それは「検索しない」ことです。SNSの普及により、「#カフェ巡り」などのハッシュタグをタップして情報を得る“タグる”文化が浸透しました。これは他人が用意した“入り口”をたどるだけで情報にアクセスできる便利な方法ですが、その一方で「どんなキーワードで検索するか」「何を知りたいのか」といった問いを自分で立てる必要がありません。
実際に全国各地で中高生に対して探究学習の支援を行なっていて、「これについて調べてください!」という指示を出しても、「どう検索すればいいのかわからない」「Googleを普段使わないからわからない」という生徒が一定数存在します。



















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